第76話 燃やし方がなってない

「お疲れい、カデン!!」


「ありがとう、イスカル」


二回戦目を突破し、再び控室に戻ってきたカデン。


「お疲れ様です、カデンさん。今回もまたド派手な活躍をしたんですか?」


「ど、どうだろう」


「闘技場の揺れが他の時と比べてやや大きかった。だから、派手な倒し方をしたのではないかと思ってな」


リュファラだけではなく、ガルハドも何かしら派手な方法でカデンが対戦相手を倒したのではないかと予想していた。


「えっと……その、運良く一発で倒せたんだ」


「「「「「「「っ!!??」」」」」」」


カデンの言葉に、他学園の参加者たちの表情が揺れた。


ただ勝利しただけではなく、一撃で勝利した。

それは両者の力に決して小さくない差があることを意味する。


「はは!! マジかよ、やるじゃねぇかカデン!!!」


変わらず友人の強さを称賛するイスカル。


その気持ちに嘘はないものの、内心ではそこそこ驚かされていた。


(イナカナが相手だったよな……槍相手に一発か……マジで凄ぇな)


ロングソードよりも槍の方がリーチが長いのは常識も常識。

イスカルとしてもそういった部分を理由にして負けるつもりはないが、俺だって出来るぜ!!!! と自信満々に宣言することはできない。


ロングソード使いにとって、槍使いを一撃で仕留めるのはそれほど難しい事である。


カデンの事を詳しく知らない、もしくは平民に対してよろしくない感情を持っている者たちからすれば面白くない話ではあるが、目の前の平民は二回……二回、訓練を受けてきた貴族の令息を倒した。


その事実が、まぐれや運が良かっただけという言葉が喉に詰まる。


「やるね~~、カデン。二回戦目でそんな凄い結果を出したんだったら、大会が終わった後にスカウトがくるかもしれないね~~」


ソニアの言葉に、また他学園の者たちが反応を示す。


優秀な学生には早めに唾を付ける。

そういった考えは騎士団にもある……しかし、カデンたちはまだ一年生。


これから三年間で、どれほど伸びるかはまだ未知数の存在。

人によって限界値が異なるからこそ、質の高い騎士団であればあるほど、基本的に一年生にスカウトを送ることはない。


「断言は出来ませんが、カデンであれば上位の騎士団から誘いがくるかもしれませんね」


しかし、リュファラたちはカデンの実力を知っている。

まだ……自分たちとの模擬戦では力を隠していることも知っており、一回戦と二回戦ではその手札を使っていないであろうことも察していた。


そのため、カデンであればあり得ない事が起こってもおかしくないと思っていた。


だが、その内容まで見過ごすことは……彼らには出来なかった。


「おい、お前っ、ら、ぁ」


さすがに調子に乗り過ぎだと、怒りが爆発しかけた。


騎士になる……それは、彼らにとって確かに目標ではあるが、基本的に学園を卒業すればどこかしらの騎士団に入団することが出来る。


とはいえ、彼らにも憧れの存在というのがいる。


まだ歳若い年齢ながら、最前線で活躍している先輩が所属している騎士団。

幼い頃からの憧れである騎士が在籍している騎士団。

今は既に引退しているが、伝説の存在……英雄と呼ばれていた騎士が所属していた騎士団。


そんな憧れたちがいる、いた騎士団に自分も所属したいという思いがある。


ただ、そういった猛者や傑物たちが所属していた騎士団は、基本的にどこもまず入団することすら難しい。


「…………」


「っ……くっ」


しかし、そんな怒りの爆発はガルハドの睨みによって即鎮火させられた。


(ふん……怒りの燃やし方がなってない)


ガルハドとしても、彼らの気持ちが全く解らないわけではない。

悪い意味で貴族らしいタイプではないガルハドだが、それでも心がある人間……青年である。


彼にも憧れの騎士といった存在がいる。

他者がその騎士が所属する騎士団からスカウトを受ければ、少なからず嫉妬の気持ちが沸き上がると自分でも予想している。


だが、であればそういった優れた強者に負けじと鍛錬を積み重ね、追いつき追い越そうとすればいいだけの話。


(少なくとも、まだ諦める時ではないだろう)


個人によって限界値に差があることはガルハドも知っている。


それでもまだ学園に入学したばかりであり、これから多くを学び、積み重ねていく。

基本的に学園を卒業しても、数年間は伸び続けていく。


それを考えれば、現時点で他者を妬み、平民を脅そうとするなど、自ら負けていると……自分はあなたよりも格下ですと認めているようなもの。


そして何より……ガルハドにとって、カデンは友人である。

まだ知り合った数か月の仲ではあるが、カデンのことを友人だと思っているからこそ、友達に対する脅迫と捉えられてもおかしくない暴言は見過ごせない。


結局のところひと睨みで喉から出てくることはなかったものの、彼らが口に出そうとしていた言葉は平民であるカデンにとっては脅迫と同じであった。


それから数十分後、ガルハドの番が回ってきた。


「良い試合をしようか」


「っっっ……」


相手はカデンに暴言を吐き散らそうとしていた他学園の学生。


結果だけ語ると……彼はイナカナと同じく、壁端まで吹き飛ばされて激突し、ノックアウトすることなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る