第19話 闇の中の希望
月明かりの下、エルディアの王城が遠くに見えてきた。
重々しくそびえ立つその姿は、かつてレオンが追放されたときに見上げたものと変わっていないはずだった。だが今、それはただの建物ではない。暴君ベルツの支配の象徴であり、奪われた民の平穏と希望が封じられた場所だった。
その城を前に、レオンの足がふと止まる。
「……これからどうする?」
振り返った彼の顔には、いつになく慎重な表情が浮かんでいた。
「昼間に国王の元へ向かえば、きっと多くの民が巻き込まれる。奴の命令ひとつで、衛兵が無差別に動く可能性もある。だからこそ、今のうちに突入するべきなのか……それとも、もう少し夜が更けて、人々が完全に眠りにつくまで待つべきか……」
その問いかけに、仲間たちはそれぞれの表情で答えを探していた。
まず口を開いたのは、ディーだった。腕を組み、城を鋭く見つめながら静かに言葉を発した。
「確かに、昼間の突入は賢明ではない。奴が恐怖で縛っているとはいえ、民の中には未だ国王に忠誠を誓っている者もいるはずだ。混乱を避けるには……夜のうちに動くのが最良だろう。」
アゼルも頷き、低く重い声で続けた。
「我々の目標は、“討伐”ではなく、“未来を守る”ことだ。ならば、無駄な血は流すべきではない。夜の闇が深まる頃合いを見て動く。それが、民を守る者の判断というものだ。」
「うん……確かに、一理あるわね。」
リリスは腰に手を当てながら、少し悪戯っぽく笑う。
「どうせあのベルツのことだもの。夜なら油断しているか、酒でも飲んで気が緩んでるかもしれないし。突撃するにはちょうどいいわ。」
「へへ、夜討ちってのも、たまには粋なもんだ。」
最後に口を開いたのはゴーンだった。腕をぶんぶん回しながら肩を鳴らし、楽しそうに笑っている。
「それに……俺らが大っぴらに歩き回ったら、間違いなく大騒ぎになるだろ。魔族が堂々と昼間に現れたら、それこそ民が怯えちまう。レオン、お前もそれは本望じゃねぇだろ?」
レオンは、皆の意見を黙って聞きながら、やがて小さく息を吐いた。
「……ああ。ありがとう。俺自身、心のどこかで答えは出てたのかもしれない。昼間に動けば、取り返しのつかない犠牲が出る。だったら──」
城を見上げるレオンの目に、迷いはなかった。
「このまま夜が深まるのを待って、静かに潜入する。そして、ベルツの支配を……終わらせる。」
彼の言葉に、四人の仲間たちは黙って頷いた。
夜は静かに、その時を待っていた。
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