第6話 四天王

 魔王の城の奥へと進むうちに、レオンはふと足を止めた。


 重厚な廊下の先、城内の空気は変わらず静まり返っていたが、隣を歩くゴーンの足音がどこか頼もしく感じられるようになっていた。


 無言のまま進むのは、正直なところ、少し気まずい。


(せっかく仲間になってくれたんだ……もっと、知っておきたいよな)


 レオンは小さく息を整え、意を決して口を開いた。


「なあ、ゴーン。前から思ってたんだが……君、他の魔物たちと比べて、どこか風格が違う気がするんだ。もしかして、貴族か何かだったりするのか?」


 その言葉にゴーンは、ほんのわずかに驚いたような表情を見せたあと、頭の後ろを掻いて、少しばかり照れたように笑った。


「あー……いや、貴族ってわけじゃねえが……一部の魔族からは“四天王”って呼ばれてるな。偉そうな肩書きに聞こえるけど、俺自身はあんまり気にしちゃいねえんだ。他のヤツのことも知らねえしな。」


「四天王……!」


 レオンは思わず目を見開いた。城を護る強者たち──その名は各地でも噂として耳にしたことがある。しかし、目の前にいるゴーンの飾らない姿に、そんな威圧的な印象はまるでなかった。


「なるほど……となると、できれば四天王全員を仲間に加えたいところだな。仲間は多い方がいい。個々の力が強ければ、なおさら心強い。」


 あまりにも真っ直ぐで突飛なその発言に、ゴーンは一瞬目をぱちくりとさせたが、やがて堪えきれずに笑い声を漏らした。


「へへっ、真面目な顔してバカみてぇなこと言ってんな、お前。でもまあ、そういう無茶な夢語るヤツ、嫌いじゃねえよ。」


 照れ隠しのように鼻を鳴らすと、ゴーンは少しだけ歩調を緩め、レオンに肩を並べるようにして言った。


「せっかく俺が仲間になってやったんだ。……無茶はすんなよ?バカみてぇな夢でも、叶えるなら死ぬなってことだ。」


「ありがとう、ゴーン。でも、無茶は……するかもしれないな。それでも、誰かがやらなきゃならないんだ。」


 軽く笑いながらそう答えるレオンに、ゴーンはふんと鼻で笑い、黙って前を見据えた。


 二人の足取りは、まだぎこちなくもあったが、確かに前へと進んでいた。


 これから出会うかもしれない、まだ見ぬ“四天王”たち。彼らは敵か、味方か。それとも、思いもよらぬ道を選ぶ存在なのか。


 レオンとゴーンは、微かな期待と緊張を胸に、静まり返った城の奥へと歩みを進めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る