第4話 暗中模索

 仲間を求めず、助けを請わず、ただ一人──


 レオンは、過酷な道のりになることを十分に理解していた。それでも彼は、誰かに守られることも、寄りかかることもせず、己の信じる道を貫くことを選んだ。


「もし、魔王と共にベルツを討つのなら……魔族の信頼を手に入れなければならない。」


 旅の途中、幾度も道を阻む試練があった。険しい山道を越え、暴風の吹き荒れる谷を進み、夜には冷たい雨をしのいで野宿を重ねた。誰とも言葉を交わさぬ日々は、心を静かに削っていったが、それでも歩みを止めることはなかった。


 やがて、霧に包まれた深い山奥に、目的の地──魔王の城が姿を現した。


 灰色の石造りで、荘厳な威圧感を放つその城は、長年手入れがされていないようで、蔦が壁を這い、塔の先端は雲に覆われ見えなくなっていた。だが、その古びた外観の奥には、確かな力の気配が感じ取れた。


 レオンは深く息を吸い、足を止める。


「ここが……魔王の城。」


 しばし立ち尽くした彼の胸に、かすかな躊躇いが芽生える。自分の考えは間違っていなかったのか。本当に魔王と対話できるのか。そして、受け入れてもらえる可能性はあるのか。


 答えは、どこにもない。


 それでも、彼は俯かず、心の奥で静かに言葉を吐き出した。


「ここまで来たんだ。今さら恐れる理由なんてない。」


 拳を握る。足に力を込める。自分自身に発破をかけるように、前を向いた。


 そして、城の重厚な扉の前に立ち、その一歩を踏み出した。


 それは、誰に知られることもない、静かなる決意の証。誰かに背中を押されたわけでもない、ただ一人の勇気が踏み出した一歩だった。


 世界を変える旅路が静かに、そして確かに、動き始めようとしていた。

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