第3話 恐れと可能性
数日かけて森を抜けたレオンは、ついに隣国ルーモスの街へとたどり着いた。石畳の道が整備され、人の往来も多く、活気ある市場が広がっていた。しかしその喧騒の裏には、どこか重苦しい空気が漂っていた。
「さて……まずは魔王について情報を集めないとな。」
レオンは市場の片隅にいた果物売りの老人に声をかけ、何気ない会話の中で自分がエルディアから来たことを告げた。すると、その瞬間、老人の目の色が変わった。
「……あんた、エルディアの人間かい?」
「ああ。だが、王に逆らい、追放された身だ。」
レオンがそう答えると、老人は溜め込んでいたものが一気に吹き出したかのように語り始めた。
「ベルツはひでえ奴だよ……あいつが王になってからは、貢物を次々に求められる。こっちは国境の近くだってだけで、米も麦も持ってかれてよ。土地はすっかりやせちまった。」
周囲にいた他の人々も、レオンの話を耳にして次々と集まり、口々に恨みや怒りを語り出した。
「あんなの魔王より残酷よ。せめて奴が魔王に滅ぼされれば、うちらも少しは楽になるってのに。」
「前の王様は評判が良かったんだろ? なんであんなのが後を継いじまったんだか……。」
レオンはその言葉に、やるせなさと怒りを覚えた。ベルツの暴政は故郷だけでなく、隣国にも深い傷を与えていた。民が日々の糧を奪われ、希望を失い、それでも声を上げられずにいる。その現実に、胸の奥が重く沈んだ。
宿に戻ったレオンは、燭台の灯りの揺らぎを見つめながら、ふと自分の中にある違和感を見つけた。
「……そういえば、魔王って何者なんだ?」
記憶を辿っても、魔王が実際にどこかの国を滅ぼした、街を襲ったという話は聞いたことがない。魔王という存在は、ただ「恐れられている」だけで、誰もその真の姿を知らなかった。
「俺はこのまま、魔王を討つべきなのか? 討たなければならないと、誰が決めた?」
疑問が、次第に確信へと形を変えていく。
「本当に討つべきは……俺の故郷、エルディアを……いや、この世界を穢し続けるベルツじゃないのか?」
心の奥にあった怒りと使命感が静かに燃え上がる。
しかし、正義だけではベルツを討つことはできない。力だけでも民は守れない。だからこそレオンは考えた。もし魔王がベルツのような無意味な暴君ではなかったら──
「見極める必要がある。魔王が何者なのか、何を望んでいるのか。そして、もし望む未来が俺と重なるのなら……」
レオンは立ち上がった。
「味方に引き入れるまでだ。そして共に、ベルツを倒す。」
宿の窓から夜の街を眺めるレオンの瞳は、決意と疑念が入り混じる静かな光を宿していた。
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