おっちゃん、頑張って下さいませ!

驚愕の根源。斧戦士アビーは、突然現れた少年のカバンに着いていた小さなクマのぬいぐるみに握りついていたのだ。




「この生地の質感。染め方、模様。縫い付け方。綿の柔らかさ、ポーズ、そしてこのつぶらな瞳。これは、トテム工房のコグマシリーズじゃないか。しかも私が見た事ないデザイン。まさか⋯⋯新作、新作なのか!?」




「どうした、お姉さん。そんなに身を乗り出したら、おケツが落っこちちゃうよ」




「お前、これをどこで手に入れた!?専門誌にも、何も情報はなかったのに!」




興奮したアビーがツナギの胸ぐらを掴みに掛かりながら迫った瞬間だった。




「大変、魔物、魔物の群れよっ!!」




そう叫びながら店の中に飛び込んで来たのは、雑貨屋の娘だった。さらに次の瞬間には、その娘は追いかけてきた魔物に持ち上げられ、宙吊りの状態で店の中を飛んだ。




「ガーゴイル!!」




出入り近くのテーブルに座っていた2人居たハーフエルフのどちらかがそう叫んだ。それに反応したのか、魔物は娘を3本指の腕で持ち上げたまま、短めの足の爪をハーフエルフに向かって振り回す。




「危ないっ!!」




もう1人のハーフエルフが庇い、その攻撃を食らう。




その間に、カウンター席の2人は密約を交わした。




「アビー、一緒に戦おう」




「報酬は?」




「もちろん、そのクマさんだ。黄金世代の力を見せてくれ」




「ふんっ、言われるまでもない」






少年は盾と剣を持ち、アビーは背後に積まれていたテーブルに立て掛けていた斧に手にした。




「くらえっ!」




ツナギはわざとガーゴイルの注意を引くように声を出し、骨剣をガーゴイルの左側へ投げつけた。




それと同時に椅子を蹴り飛ばしながら駆け出し、カウンター席の上を大きなストライドで行く。投げつけられた骨剣を交わしてガーゴイルがツナギが迫る方へと少し近付く。




その時には射程圏。そしてカウンターの端までたどり着いて縁の部分を蹴って飛び上がりながら盾を振りかざす。咄嗟に交わそうとしたガーゴイルよりも深く、ツナギは娘の体に腕を回した。




床に着地しながら娘の体を強く引き寄せた。ツナギとガーゴイルの引っ張り合いになったが、娘の着用していたブラウスがビリッと破けたことで終戦。




背中側の素肌を大きく露出することになってしまったが、ツナギは雑貨屋の娘を救い出すことに成功した。




「うおおおぉっ!!」




そうなってからはようやく、周りにいただらしない大人達も動き出す。6人グループの1番体格も声も大きい音が岩のように大きなハンマーをガーゴイルに向かって振り上げた。




しかし、それを振り下ろすよりも早くガーゴイルはがら空きになった胴体に、両足の爪で突きを繰り出した。


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