先読み力ですわね。
「ギャァラブススッ!」
背後からツナギの一撃を食らった個体は、器官から体液を漏れ出しながら地面に落ちた。
「もういっちょ!!」
グシャッ!
「ギャァラブススッ!」
またも彼は一撃で仕留めた。群れはあと4匹いるが、ただそこに群れているだけ。互いに補い合うことなど出来ず、3匹目の簡単に背後を取られて骨剣の一撃を食らってしまった。
そこまで来てようやく身の危険を感じた魔物達。大きな羽をバタつかせて高く宙に上がろうとしたが、逆にツナギに狙い易くした。
もう背後に回る必要もない。下から下腹部を叩くのみ。有機体には少なからず効果があるはずの鱗粉があれば外敵に下に回られることないはずだった。
「もらった!!」
毒蛾の真下に滑り込むツナギ。それを見ていた窓越しの子供達は、マジフトの試合でのショーの姿と重ね合わせた。
そのままゴール前に持ち込まれたらピンチになる場面で炸裂するツナギの深いスライディングタックル。自分より2回りは大きい年上の選手から、見事にボールをかっさらうあのディフェンス。
それを突如現れたら毒蛾の化け物相手にも存分に披露する。
そして滑り込み終わりの低い体勢のまま、地面から半月を描くように骨剣を振るう。
バシャン!ビシャン!
毒蛾の腹の中で何かが破裂する音が校舎の中まで聞こえた。
「よっしゃー!!あらかた全滅ぅ!!」
校舎の中にいる後輩達や先生。近くの小屋や茂みなどに隠れていた村人達にアピールするようにツナギは、また剣を振り上げた。
それと同時に朝から村を覆っていた霧が晴れていく。村の警備兵である数人の大人が駆けつけた。どういうわけか、あまり痺れ毒が効かなかったおかげもありながら、3人がかりでやっと仕留めた毒蛾の死体がショーの足元に6匹も。
大丈夫か!?怪我はないか!?
なんて言葉を村の警備兵達は掛けることなんて出来なかった。毒蛾の群れよりも恐ろしい存在に見えてしまっていたから。
霧が晴れたことで、程なくして村中の警戒態勢は解除された。すると子供達が一斉に校庭へと飛び出し、そのままツナギの元へとダッシュする。
「ダメよ、みんな!毒蛾の痺れに侵されてしまうわ!」
子供達の少し後ろからやってきた先生がそう叫んだが、ツナギは安心させるように両腕で大きく丸を作った。
「大丈夫だよ、センセ。みんなに渡したチョコレートケーキの中に蛾毒を中和してくれるハーブを入れてもらってるからね」
「あなたまさか、霧の予報が出た時にそこまで予測してみんなにケーキを⋯⋯」
「これから旅立つ若者をナメるんじゃありませんよ。このくらいしないと村を出てすぐに死んじまうっての」
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