魔王と勇者の二刀流
ぎん
どういうことですの?
バイデルタイン城。
玉座の間。
厚い雲で遮られても尚、月の光が僅かながらに地上へ届く。
大理石の床に敷かれた深い茶色の絨毯の上。
歴代最強格の戦闘力を誇るとされる魔王セードリアンが待ち構えていた。
向かい合うは、国王軍最強のキャラバン部隊である❲黄金世代❳の若きリーダー、アナスタシア。別の名をフレアプリンセス。シリウスの加護を受けし、勇者の心と共鳴する丸みを帯びた盾と煌々と赤く輝く灼熱の剣。
混沌より生まれ、魔界の最奥より出でし、漆黒のオーラと平和を天に願う人々の想いを背にし、真紅のオーラがぶつかり合う。
その混沌としたエネルギーに両者以外の下僕や戦友達が立ち入る事は不可能である。
数百年の長い月日。大陸の覇権を掛けた終わりなき軌跡の果て。
最恐の魔王と最強の女勇者の邂逅。
最後の戦いが切って落とされたはずだった。
「な、なんと可愛らしい娘か⋯⋯」
「な、なんて魅力な方なのかしら⋯⋯」
2人はなんと、ひとめで惹かれ合ってしまった。
そして魔王と勇者は愛し合ってしまった。玉座の間からヒタヒタと廊下を歩き、魔王の寝室まで。そこに置かれているゴッドサイズのベッドの上で。
そして互いに誰も干渉出来ぬ結界を張り、3日3晩禁断愛を交じり合わせた結果。
2人は愛の果てに力を使い果たし、息絶えてしまった。
死に際に唱えた禁断の呪文により生み出した、1人の赤ちゃんの中に愛の結晶を残して。
16年後。
ウィルサンゲチェルミル都市下パミラ町属ワタ村の外れにあるお屋敷。
今日はとある少年の16歳の誕生日。歩いて3時間掛かる山奥の中であるにも関わらず、村の子供達のほとんどが集まっていた。
ワタ村の村長の家はおろか、パミラの町の一般聖堂よりも広いお屋敷の食堂。
とある有名魔術アカデミーの鍛錬室に置かれていた濃い茶色のテーブルを皆で囲む。今日の主役である少年の両隣まで、招待された子供達でぎっちりとなっていた。
新鮮フルーツの盛り合わせ。チーズを練り込んで焼き上げたフワフワのパン。
2人で1羽のローストチキン。熟練の冒険者でも単独では仕留めるのこと叶わないブラックワンホーンブルのモモ肉を使用したローストビーフ。
隣村名産のトウモロコシを新鮮な生乳でじっくり炊いて甘みを引き出したポタージュスープ。ひき肉たっぷりのミートソーススパゲッティ。
今日が最後と知っているお屋敷専属シェフの特製ガーリックソース。それがあれば野菜嫌いな子供達もスティック状のニンジンやセロリに伸ばす手が今ばかりは止まらない。
楽しい晩餐。皆が主役に思い思いのプレゼントを渡し、それをもらった少年が感謝の意を込めて、村歌を面白おかしく替え歌にして熱唱。この場は大盛り上がりとなった。
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