第2話 各々の証言
皆が登校し始める朝8時、生徒会室で心臓を一突きされ殺害されている朝倉和也先輩が発見された。
「この事件の捜査を担当します。猫又です」
私たち生徒会メンバーは、警視庁本部から来た捜査一課の猫又警部に集められた。猫又警部は可愛い名前の割に強面でガタイの良い体をしている人で学校からの通報を受け、部下の犬飼刑事を連れてやって来た。
集められたメンバーは全部で8人。私たち生徒会メンバー5人と第一発見者にして美術教師の外森先生、図書室の先生である田村先生、昨日最後まで学校に残っていた園原先生だ。
他の先生は職員室で待機、事件に関係ない生徒も教室で自習をさせられている。
「では、事件の確認をします」
猫又警部は事件について下記のことを話した。
・事件の被害者は生徒会副会長で3年の朝倉和也さん。
・彼は昨日は生徒会の活動を休み、図書室で勉強していた。
・今日の朝8時、外森先生が生徒会室の中で心臓を一突きされ、倒れている朝倉さんを発見した。
・朝倉さんの死体は検査の結果、死後12時間は経過しているということ。
・凶器はペイディングナイフ
・凶器のペインティングナイフには指紋が付いていなかったこと。
「これから一人ずつ事情聴衆をします」
部下の犬飼刑事が言った。
「ではまず、第一発見者の外森先生」
「あなたはなぜ生徒会室に訪れたのですか?」
「はい、生徒会室は授業の備品も保管してあり、今日の授業で使う絵の具を取りに行くために生徒会室を訪れました。しかし、ふと窓から中を確認すると朝倉くんがペインティングナイフで刺され倒れているのを発見し、急いで駆け寄ろうとしました。しかし、鍵を入れるはずの鍵穴が壊されていることに気づき、仕方なくドアを破壊して中に入りました。」
「ドアの鍵穴が壊されていた?」
「いや、正確に言うと鍵穴にボンドのようなが詰まっていて、鍵が入らなくなっていたんです。」
「ボンド…ですか」
「はい。さっきも言いましたが、生徒会室は授業の備品置きにも使われています。そのため、ボンドもペインティングナイフもそこに保管されていた学校の備品だと思います。」
「なるほど、では次の質問です。あなたが見つけた時と今のこの部屋は何か違いはありますか?」
「ドア以外違いはないと思います。朝倉くんを助けることで頭がいっぱいだったのであまり覚えていませんが…」
「ありがとうございます」
「では次に田村先生。あなたは図書室の先生のようですが、放課後朝倉さんが来ていたのは本当ですか?」
「本当です。私は放課後いつも図書室におり、昨日ももちろんいました。そのため、朝倉くんが勉強しに来ていたのも目撃しています。」
「朝倉さんは何時頃まで滞在していましたか?」
「18時ぐらいまでいました」
「ありがとうございます」
「では次に生徒会の皆さんです。昨日朝倉さんは本当に生徒会室に来ていませんか?」
「はい。本当です」
代表して姫川先輩が答える。
「生徒会では普段何をしていますか?」
「生徒から集めるために設置している意見箱の意見に目を通しながら対策案を考えるのが主な活動です。昨日もそれを行なっていました」
「何時頃終わりましたか?」
「18時です。私たちの学校は18時にほとんどの部活が終わるのでそれに合わせています」
「活動終了後、生徒会室は出入り自由なのですか?」
「いいえ。教室の鍵を閉めるため、出入りできません。また、鍵を職員室に返しに行きます。私たちの学校は各教室の鍵を職員室で保管しており、使う時に借りに行き、使い終わったら返しに行くんです」
「なるほど。では今回鍵を返しに行ったのは誰ですか?」
「私です。担当の誰かが返しに行くというルールはないですが、会長ですし、基本私が返しに行きます」
「なるほど、ありがとうございます。では朝倉さんが勝手に生徒会室の部屋に入ることは厳しいと言うことですね」
「そうだと思います」
「では最後に、園原先生に聞きます。あなたはなぜ最後まで学校に残っていたのですか?」
「明日の授業の資料を作っていました。私は理科の教師をしていて、今日は実験の予定だったため、そのためのプリントを準備していました」
「その作業はどこでしていました?」
「職員室です」
「では、姫川さんが鍵を返しに来るのを目撃していますか?」
「はい。目撃しています。確かに彼女は18時頃に鍵を返しに来ていました」
「その後誰も生徒会室の鍵を借りに来ていませんか?」
「はい。借りに来ていないと思います。それに学校では鍵の貸し借りを時間と共に紙で記録しているため確認できますよ」
「皆さんありがとうございました」
「ですが、困りましたね警部。話を聞く限り誰も犯行できそうにありません。」
「そうだな。凶器からも指紋が出てないし、これは殺人事件でもただの殺人事件じゃないな。特にこのケースは…」
猫又警部が言った。
隣の犬飼刑事は猫又警部が何を言っているか理解できてなさそうだったが、私は何を言いたいのか分かった。
「密室殺人ですね」
その場にいた全員がこっちを見て驚いた。
「お嬢ちゃんすごいね。確かにそういうことなんだけど、まさか君からその言葉が出てくるなんて」
「えへへ」
「誰も褒めたわけではないんだけどな…」
実は私の趣味は読書で、特にミステリ小説が大好きだ。そのため、今回の事件が密室殺人であることも分かったのだ。
「でも困ったな。本当に密室殺人だとしたらかなり厄介だ。とりあえず職員室にある鍵置き場を見に行きましょう。何かヒントを掴めるかもしれません」
猫又警部の指示で私たちは職員室の鍵置き場に向かうことになった。
しかし、私たちは気が付かなかった。捜査をしている警部さん達と私たちの他にこの場にもう1人の人物が潜んでいたことに。
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