【このまま暮らそう】

「ま、待て!逃げるなサンジュニャー!」



「いや!来ないで!」



追う私から逃げ出すサンジュニャー。



「なぜ私から逃げる!?眩しいとは何なのだ!?答えてくれ!サンジュニャー!」



悲痛な叫びを聞き、サンジュニャーは足を止めた。



「まさか……スーリヤ……?」



「ああ、私だ……。」



私の正体を知った彼女は、申し訳なさそうに首を擦り付けて来た。


何ヶ月ぶりだろう。

こうして彼女と触れ合ったのは……。



「サンジュニャー……逢いたかったぞ……。」



「私もです……。ごめんなさいスーリヤ……。」



私達は互いに求めていた。

ならばなぜ離れたのか……。

『眩しい』という言葉に謎が隠されているのか。


私は彼女に理由を尋ねた。



「貴方の発する輝きが目に痛くて……それで耐えられなくなって……」



「か、輝きって……太陽のか……?」



頷くサンジュニャーにため息をつく。



「なぜ言わなかったのだ?言えば何か方法を考えたというのに……。」



「言えませんよそんな事。太陽から輝きを無くす事などできないでしょう?」



確かにそれは出来ない。

だが今はどうだ?



「サンジュニャー?今は眩しくないだろう?」



「ええ、眩しくないわ。だって今の貴方は──」



そこでサンジュニャーは気付いた。


今のスーリヤは眩しくない。

こうして傍にいても苦痛がない。


彼は今、馬の姿をしているのだから──。



「サンジュニャー。このまましばらく暮らしてみないか?」



「え?このままって……?」



「馬として暮らすのはどうかと聞いている。眩しくなければ逃げないのだろう?私は君と一緒に暮らしたいのだ……。」



それはサンジュニャーにしても同じ事。


結婚生活に耐えられなくなったのは太陽の輝きが原因なのだから。

その愛情は失われていないのだから。


スーリヤの申し出を受けたサンジュニャーは、今しばらく馬としての生活を続ける。

夫であるスーリヤと共に──。



馬として暮らす夫婦の間に、やがて3人の息子が誕生する。


神々の医師となる双子のアシュヴィン双神。

そして、重要性の無いイマイチな息子レヴァンタ。


こうして3人の息子と共に、スーリヤとサンジュニャーは馬として平穏に暮らしていた。


だが、その生活にも終わりが近づく。



「なあ、サンジュニャー。そろそろ元の生活に戻らないか?」



その言葉に思いきり同意するサンジュニャー。

二人はこの動物としての生活に飽きていたのだ。


今なら太陽の輝きも我慢できる。


頷いたサンジュニャーと子供達を連れ、スーリヤは懐かしの我が家へと帰宅した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る