第5話 その中にあった物は
入った結果、そんなに何か特別なものがあるとは思えなかった。
大体はさっき入った荷台と変わらない。ただ一点を除いて。
四角い箱がシーツで覆われていた。
「このシーツで覆われてるのは一体なんだ?、とるか?」
「そうだな、とりあえず見ないことには」
そう言って、ジンがシーツをとった。
そこで目にしたものは、あまり見ていいものとは言えなかった。
「こいつは酷いな、だから時間がかかったのか」
エイジがそう言った。
時間がかかったと言っても、5分くらいだが確かにこれなら長いかもしれない。
中にあったのはまず、物ではなかったそれに、危険度はこれといってゼロ
である。なぜならそこにあったのは・・・
一言で言って、人だ。それこそまだ10代くらいの女の子だった。
その体は、痣と傷で全身が覆われていて、はっきり言って気持ち悪かった。
性的なことはされていなく、ただ暴力を振るわれただけだと思われる。
人を一方的に殴るには、5分もかからない。
その時間ただやられるだけならどれだけつらいことか。
あの2人が傷つけたと思われた。口には叫ばせないように縄でふさがれている。
「さて、どうしたことか」
「とりあえず縄を解くか」
口の縄を解いた。
「あ、ありがとうございます」
「あまり多く話そうとしなくていい、簡潔に質問に答えてくれればいい」
そう真顔で俺は言った。そしたらただ、頷いた。
「ここにきてどれくらいだ?」
「もう、3日目だと思います」
割と最近誘拐されたのか。捜索願いは出てないのか?
疑問には思ったが聞かなかった。
「君は貴族かい?それともそれなりの地位があるのかい?」
ジンが疑問に思ったことを聞いた。服装がそれなりに豪華というかそれなりの格好を
していた。それでも数日着替えてないし、血だらけだからあまりいい格好とは言えない。
「貴族ではありません、親は流通関係の仕事をしています」
「そうか、身の賞金とかはかけられているかい?」
「かけられているとは思えません。家でをしていたので」
家出をして、その時に捕まったのかもしれない。ホイホイついていったのか、そのまんま誘拐されたのかは謎である。
「安心して、僕たちは君に何もしない」
(それって一番最初にいう言葉じゃないかな)
そう彼女は思った。おかしな人とも思った。
俺たちに今重要なのは
「なあ、何か他の服はないか。俺たちが着れるような大きさの」
「でしたらそのタンスに何かあると思います。」
そういわれて、目の前にあるタンスを開けた。
その中に、沢山の服が入っていた。どれもこれも見たことがないような服ばかりで、これがこの世界の服なのかもしれない。
とりあえず服を着替えてみた。特にこれといった感想はない。
自分たちの着ていて服は、そこら辺にある適当なバックに詰めた。
思い出というか、なんとなく捨てられなかったからだ。
捨てたら、もう手には入らないかもしれないから。
「今、君を救うことはできない。簡単に言って鍵がないんだ、それで、この盗賊の一番偉い人の名前を教えてほしい」
「それでしたら、確か『アーバン』と呼ばれていたと思います」
「ありがとう、それは凄く助かる」
そう言って、自分たちの方針が決まった。なので荷台から出ようとしたときに
「お気をつけて」
「「君もな」」
そう言って、希望か何かを期待している眼差しを背に荷台を後にした。
そうして少し歩いて、声が荷台の中に聞こえないとこまで行った時に、ジンが話しかけてきた。
「で、本当のところはどうする」
そう、確認をとるような質問をしてきた。
まず、結論から言うと彼女は助けない。
それは、ジンが予想していたとうりだと思う。
俺たちには、彼女を助ける理由が存在しないからだ。
だからこそ、最後にかけた言葉にも意味がある。
普通なら、「気を付けて」と言われたら、「ありがとう」と返すのが普通だと思う。それなのに「君もな」と言った。それに、もし俺たちに助ける気があるなら
彼・女・の・名・前・を一番最初に聞くはずだ。
なので、、最初に見たときから助ける気はなかった。
残酷かもしれない。でもそれも運命だ。
たった1人を助けるために20人を相手にするほどの力は持っていない。
何より大切なのは自分たちの身の安全だ。
俺たちは正義の味方なんてそんなものにはなれないし、
なりたいと思はない。
〇〇さえ守れれば、それでいい。
これが、エイジとジンの考え方。生き方だ。
だからこそ、次にすべきことをしないとならない。
「アーバンって名前がこの盗賊の親玉らしいな」
「まず服は何とか手に入れたから、怪しまれることはないだろう」
「接触して、まずは町か何か、集落でもいい。人が集まっているところに行きたい」
「了解隊長、異論はないぜ」
そう言って、とりあえず「アーバン」に会うことが決まった。
少し歩いて、火の番をしている数人のところに行ってみた。
「でさ~そん時になんて言ったと思う?」
「お前の脳みそカタツムリより回転速度おせえよ!ってか」
「「わはははは~」」
そんな会話をしていた。一体何の話なのかとても気にはなった。
酒の匂いが凄かった。正直1杯や2杯なんてものじゃないなとさえ思える。
近づいて行った時に、その1人がこっちに気づいた。
「あ~ん、見ねえ顔だな、てめえら」
「最近は入った新人のエイジです、そしてこいつが」
「新人のジンギって言います。先輩に挨拶しておこうと思いまして」
普通なら、例え新人が入ってくるなり情報が入っているはずだ。
だけど、この人たちには現実も幻想も区別がつかない。だからこそ
運がとてつもなく良かったといえる。
「そう~か、新人か、なんか新しく入ってくるみたいな話聞いたような
聞いてないような、どうだったっけな。まあいいや」
「そうですよアーバンさん、今はそんなことどうでもいいじゃないですか」
「今は酒を飲みましょうよ」
そんなことを周りの奴らが言って、直ぐに酒を飲み始めた。
ファーストコンタクトはとったし、このまま退散しようとした時に、
「ほら、お前らもいよ、新人なら沢山話さないとな」
そう、アーバンが言ってきた。この人、割と新人にやさしい、いい人なのかもしれないと思ったが、こいつら盗賊だよな、
盗賊ってもっと野蛮で、人を人と思っていないような集団じゃないのとも思った。
だが、断る選択肢は俺たちにはない。
座っている1人が確実に腰の剣に手を置いている。
いつでも抜ける体制でいるから、確実に俺たちが断ったらその剣を抜くつもりだ。
はなから断るつもりもないが、この人たちの機嫌を損ねたらいつ首が飛ぶか、たまったもんじゃない。
だから考え方を訂正する。こいつらは紛れもなく盗賊だ。
気に入らなかったら殺す、そんな考え方しか持たない野蛮な連中だ。
「ご一緒させてもらいます」
そう言って、これから言葉に気をつけないいといけない、一つでも間違えたら首が飛ぶ、死の接待ゲームが始まった。
ジンとアイコンタクトをしながらその席にについた。
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