第4話『封じられた図書館と古文書の謎』



朝の鐘が鳴り終わる前、ユウリはこっそり制服の上に黒いローブを羽織っていた。


「……ここだな。地下通路の入り口は」


ティナから聞いた「禁書図書館」の場所。それは学園本館の地下、閉鎖された旧魔導研究棟の奥にあると言われていた。普段は立ち入り禁止――だが、昨夜ユウリの部屋に届いた封書が、彼の心を揺さぶった。


> 『汝、双極の魂を持つ者。星を喰らう影の予兆、古の記録に記されり。知りたければ、“知の牢”を訪ねよ』




「知の牢(ちのろう)……って、どう考えても“禁書図書館”だろうな」


廊下の先、冷気が漂う石造りの階段を降りていくと、黒い扉が現れた。重たく、時の止まったような気配。


「鍵が……」


しかし、ユウリが手を伸ばした瞬間、扉に刻まれた魔法陣が青白く輝いた。


《双極の者よ。汝の名は?》


「ユウリ=アーデル」


《……資格確認。解錠》


扉が、静かに開いた。



---


中は想像以上の空間だった。


石の書架が幾重にも積み上がり、空中に浮かぶ巻物や本が、静かに光を放っていた。空気は重く、どこか焦げたような匂いも漂う。


「……すごい。生きてるみたいだ」


その時――


「ユウリ!?おったら返事してや!」


慌てた様子のティナが駆け込んできた。


「……バレたか」


「当然や! あんた、夜中に抜け出すタイプちゃうやろ!……まったくもう」


ティナは息を整えながら言った。


「でも、ここって……ほんまに“禁書図書館”……やんな?」


「らしいな。古文書に、“星を喰らう影”ってのが書かれてるはずなんだ。気になるんだよ。俺が、あの試練の塔で見せた魔力のことと……何か関係ある気がして」


2人は奥の大書庫へ進んだ。そこで、一冊の分厚い黒革の本を見つける。


『星暦黙示録(せいれきもくしろく)』――と表紙に刻まれたそれは、禍々しい魔力を放っていた。


「なんか……嫌な感じするな」


「読むしかない。来た意味がない」


ページを開くと、古代言語で記された文の中に、ひときわはっきりとした一節があった。


> 『光と闇、双極の魂を持つ者現れしとき、星を喰らう影、再び封より目覚めん』

『その名、ユウリ。名を持ちし者、運命の導を得るだろう』




「俺の、名前……? なんでこんな古文書に……?」


ユウリの手が震えた。


「おかしい……この本、数百年前のもんや。こんな正確に名前まで……ありえへん……」


だがその時、書庫全体が震えた。


「地震!?」


本棚がガタガタと揺れ、空間の端から黒いもやが滲み出す。


「魔力の暴走や!」


ティナが叫んだ瞬間、黒い影が形を持ち、2人の前に立ちはだかった。


「影の使者……っ!?」


「やっぱり“封印”が緩んでるんだ!」


ユウリは即座に魔法陣を展開。手のひらから白と黒、二重の光が走る。


「ティナ、下がってろ!」


「そんな、うちも戦うに決まってるやん!」


2人の力が重なる。ティナの風属性魔法「エア・ダンス」と、ユウリの双極魔法「ルミノ・シャドウ」が交差する。


黒い影は一度は消えたように見えたが、すぐに別の場所で再構成を始めた。


「無限に再生……っ!」


「でも、封印魔法で……!」


ユウリはもう一度、魔法陣を組み直す。


「俺の名前が記された意味……わかった気がする。これは“選ばれた”とかじゃない。……“責任”なんだ」


そして、影に向かって言い放つ。


「この力で、俺は――終わらせる!」


双極魔法陣が炸裂し、影を構成していた魔素が浄化されていく。


ようやく、静けさが戻った。



---


「……ふぅ。生きてたな……」


「ユウリ……あんた、やっぱすごいわ。でも……あの影の出方、どう考えても“予兆”やで?」


「ああ。これは始まりだ」


ユウリは『星暦黙示録』をそっと閉じた。


「“星を喰らう影”……封印が、本当に解かれようとしてるのかもしれない」


その言葉が、図書館の冷たい空気に溶けていった。



---


次回予告:第5話「双子の占術師と未来視の記録」

予言を手掛かりに動き出すユウリたち。次なる手がかりは“未来を見る”という双子の占術師。だが彼女たちが語ったのは――ユウリの“死”の未来だった。

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