始業式

 チャイムがなっても教師は来なかった。

それをいい事に自然に話し声が増えてくる。

中には席を立って雑談しに行く者もいる。

俺は先程本を読んでいたが中々頭に入ってこない。

なぜならーーー


「なあ、涼風が恋水さんと別れたって本当か!?」

「シー、声大きよ。涼風君に聞かれちゃう」


 …………聞こえてるんだよなぁ。

これが根も葉もない噂だったら注意しに行ってるが、

悲しい事に事実だから何も言えない。

せめて本人が居ない所でやってほしい。


 する事がなくなったので、寝たフリをする事にする。

しばらくして周りが静かな事に気がついた。


「ん……あれ」


 顔を上げて周りを見回すと誰も居なかった。

時計を見ると9時過ぎ。始業式はとっくに始まっている時間だ。

なんで誰も起こそうとしなかったのか……うん、噂のせいだな。


「……サボるか」


 担任に何か言われたら腹の調子が悪かった事にしよう。

そう決めると屋上へ向かうべく誰も居ない校舎を歩く。

講堂は離れた所にあるので見つかる可能性も低い。


 屋上は立ち入り禁止だが、鍵が壊れているので簡単に入る事ができる。

その割に人が来る事が少ないので告白スポットとして有名だ。

ドアノブを回してドアを開ける。陽の光が差し込んでくる。


 手で影を作りながら歩を進める。

給水タンクによってできた日陰で腰掛ける。

ここには人や文明の音が一切聞こえない。


 も屋上だったなぁと思い出す。

感傷に浸っていると喉が渇いてきた。

時間を確認するとそろそろ戻らないと

騒ぎになると考え教室へ向かう。


 始業式が終わる前に教室に戻ってこれた。

少ししてクラスメイト達が帰ってくる。


「あ、いた! まったく、始業式からサボる奴どこにいるんだよ」


 そう言いながら時雨が近付いてきた。


「朝言った転校生。チラッと見えたけど

噂通りめっちゃ可愛かったぞ。お前も見とけばよかったのに」

「マジか。それは残念な事をしたもんだ」

「………」

 

 なるべく、いつも通りの調子で返す。

しかし、時雨は急に黙ってしまった。


「……悪い」


 しばらくして急にそんな事を言ってきた。


「お前が恋水さんの事を諦めてないって気付かなかった。

変な事言ってすまん」


 まさか、見抜かれているとは…

本当に、こいつの観察眼にはいつも驚かされる。

楓との同居もいつかバレてしまうのだろう。


「そういえば、今聞くのはアレだけど」

「どうした?」

「お前が恋水さんと別れた理由、聞いてもいいか?」

「なんだ。そんな事か…」


 そうして俺は彩春と別れた日の事を端的に話しだす。

話している内に当時の感情がよみがえってきた。

最後の方には語っている途中に涙が溢れてきた。


「…うっ…うっ……俺は、何か間違えたのかな」

「とりあえず、話してくれてありがと。これ使って涙拭いとけ」


 そう言いながらハンカチを手渡してくる。

ありがたく使わせてもらう事にする。

少し落ち着いたら時雨が話しだした。


「で、さっきの質問だけど…俺からしたらどっちも悪いし、悪くないな」

「えっ??」

「訳わかんないって顔してるな。まあ、俺も言っててよくわかんね」

「じゃあなんで…」

「でも、一つだけ言えるのはどっちも悪い所がある。」

「そう…かな?」


 時雨が説明してくれてるがまだわからない。


「まあ今はまだわからなくても大丈夫。

いつかわかる時がくるさ」

「本当に?」

「あぁ…俺が保証する」


 そういうものなのかなぁ。

時雨の事だし、きっと根拠はあるのだろう。

それがわかるのはいつなのか、まだわからない。


「あ、先生来たから戻るわ。じゃあな」

「おう」


 それから先生の簡単な注意を聞き流す。

これが終われば今日は帰れる。

そう考えるとやる気が出てきた。


「それじゃ、明日から授業始まるから忘れ物すんなよ〜。

それじゃあ日直、挨拶」

「起立、礼」


 日直の挨拶を皮切りに周りが騒がしくなる。

俺も帰るとするか…

その前に話を聞いてくれた時雨に挨拶してから帰ろう。

そう決めると荷物をまとめて席を立つ。


「しぐrーー」

「すみません! 日向センパイいますか!?」


 話しかけた瞬間に教室前のドアが勢いよく開いた。

そこにいたのは楓だった。






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それではまた次回で

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