第35話 俺達の未来
☆
御剣とまた仲良くなるビジョンは見えない。
だが彼女も死に物狂いだ。
だから俺は多少は彼女を見ても良いのではないかと思い始めた。
御剣と別れてから俺は美玖と買い食いしてから帰宅する。
あくまで俺達は...まだ暴力行為を起こして無罪になった訳ではない。
その分。
「お帰り。お兄」
自宅に帰ると雪乃が出て来た。
英二さん、と呼んでいた雪乃はそう呼ぶのを止めてから...普通の呼び方をする様になった。
俺はその制服姿を見ながら「ただいま。雪乃」と言う。
すると雪乃は優しく微笑みながら「お兄。渡せた?」と聞いてくる。
渡せた?、というのは多分誕生日プレゼントの事だろう。
俺は頷きながら「ああ」と言う。
「そっか。良かった」
「面倒をかけたな。雪乃」
「私は選んだだけだよ。後は全部お兄がやったんだから」
「...それで。はい」
「これは?」
「ああ。ケーキだ。ショートケーキだな」
「そうなんだ。ありがとう。買ってきてくれたんだね」
「...疲れはないか?」
「疲れているのはいつも通りかな。まあでも疲れているだけじゃ話にならないしね」
「...」
俺は雪乃の姿に注目する。
雪乃は少しやつれている気がした。
俺はその姿に「無理はすんなよ」と言う。
すると雪乃は「だね」と言いながら苦笑した。
それから雪乃は「ケーキ...分けようか」と笑みを浮かべる。
あの後、雪乃は心療内科を受診してからストレスによる過敏性腸症候群と診断された。
「...乳製品は大丈夫か?」
「うん。今は大丈夫。ありがとうね」
「大変だな。お前も」
「大変っていうか。勲章みたいなものだよ。戦ってきた勲章みたいな」
「...」
俺は雪乃と一緒にリビングに入る。
それから俺は雪乃を見る。
雪乃はケーキを見ながらキッチンで鼻歌混じりにケーキを分け始めた。
俺はそんな姿を見つつリビングに荷物を置く。
そして椅子に座った。
「お兄」
「?...どうした?」
「どんな感じだった?御剣」
「御剣か。...嬉しそうだったよ。それなりにはな」
「そうなんだ。...なんとも言えない感じが強いけど良かったかもね」
「ああ。俺はそう思うぞ」
「だね」
そう話しながら雪乃はケーキを持って来る。
地元のケーキ屋で買ったケーキだ。
それなりには美味しいとは思う。
そう考えながらも少しだけ心配しながら雪乃を見る。
雪乃はケーキと一緒に紅茶を出してくれた。
いちごを頬張る雪乃。
「美味しいね。ケーキ」
「...良かった」
「どうしたの?お兄」
「...口に合わなかったらとかお前の事を考えると心配だった」
「有名なケーキ屋さんだから大丈夫だよ」
「まあ確かにな。だけどそれでも心配だった」
「...私を心配するより美玖さんと上手くやれるかを心配しないと。あはは」
何を不安な事を言ってんだ。
そう考えながら俺は苦笑する。
すると雪乃はニヤニヤしながら俺を見つつケーキを食べつつ紅茶をあおる。
それから雪乃はゆっくりティーカップを置いてから「でもお兄。ありがと」と言う。
「勉強の息抜きになった」
「そうか。良かったよ」
「お兄は気配りが上手だよね。あはっ」
「まあな。色々な人にそれはビシバシ鍛えられたしな」
「そっか」
そう雪乃は言いながら手を止めて柔和な感じで笑みを浮かべる。
俺はそんな雪乃に「雪乃は将来的にどうしたい?」と聞いてみる。
すると雪乃は「私は...教師になりたい」と言ってから俺を見てくる。
「教師...」
「今は学校の先生になりたいんだ」
「良い夢じゃないか。まさかお前からそんな言葉が出るとは思わなかったけど」
「色々と見てきたせいじゃないかなとは思うけどね。呪われてる世界とか。お兄とか見てきたから」
「...そうか」
「悪い事ばかりじゃないって思う。まあ確かに悪いものは悪いけどね」
「...確かにな。クソはいつになってもクソだしな...」
「だけど学べた事もあった。その事もあってね。私は前に進めている気がする」
雪乃はケーキを見ながらそう話す。
俺はそんな姿を見てから顔を上げた。
それから「なあ。雪乃」と言う。
雪乃は顔を上げる。
「ごめんな」
「何が?」
「色々と巻き込んでしまって」
「巻き込んで、というよりかはわざと巻き込まれに行ったが正しいよ。お兄」
「...この世界の奴らに迷惑をかけたくなかったんだが」
「お兄。これも必要な犠牲だって思うよ。私は...仕方がないって思う。私達は迷惑を被った様な感じはしない」
雪乃はそう話しながら俺を真っ直ぐに見た。
俺はその姿に「...」となりつつ「ありがとうな」と返事をした。
だけど俺はなにもかもが悪いって思う。
だからこそ雪乃達を巻き込まない様にしたい。
今後は、だ。
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