第34話 祈り

7月13日。

性教育授業やら保護者会がある。

その中で俺は窓から外を見ていた。

円谷の逮捕。

事件は瞬く間に拡散された。

それから今に至った訳だが...しかし時間が経つのは早いな。

そう考えながら俺は机を見る。


転生してから色々な事があった。

が、その中でもデカかったのはやはり御剣と取り敢えずでも話せた事だろう。

俺は考えながら立ち上がる。

そして教室から出てから自販機で飲み物を買おうと思い歩いて一階に降りると声を掛けられた。

それは御剣だった。


「御剣?」

「淀橋くん。ありがとう」

「...何がだ?」

「私を。私らしく居させてくれて」

「御剣...」


俺はその姿を見てから自動販売機に寄る。

それから現金を入れてコーヒーを購入した。

そしてそのコーヒーを持って行きベンチに腰掛ける。

御剣はジュースを買った。

俺の横に間隔を空けて腰掛ける。


「御剣」

「なに?」

「敬語やめたんだな」

「うん。自分を自分らしく表現したいから」

「...そうか」

「淀橋くんにも助けられたしね。色々と。それもあってもう自分を隠さないで表現したくて」

「成程な」


そう話しながら俺はコーヒーを飲む。

それから溜息を吐いていると「私は前世で淀橋くんを裏切った。その分今回の世界では私は...覚悟を決めてなにもかもを曝け出したい」と話してからジュースのペットボトルを握りしめた。

俺はその姿を見ながら「...この世界のお前がそんなに背負う事は必要ない」と言う。

そして俺は前を見る。

生徒がふざけて行き交う。

そんな世界を見ながら居ると「数奇な運命だね」と御剣は言う。


「私はそういう迷信は信じないタイプだったんだよね。実は」

「...そうか」

「でもそんな中で世界は変わっていったから」

「...」


御剣はそう言いながらジュースのペットボトルを開ける。

それから飲み始めた。

俺もコーヒーをあおる。

そうしていると御剣が「山口は...どうして居なくなったんだろ」と言った。


「お前も呼び捨てする様になったんだな」

「あの子はやり過ぎたんだよ。私はそんな彼女を美鈴なんて呼びたくない」

「...そうか」


話しながら俺はコーヒーの缶を見る。

そうして居ると「なにをしているの?」と声がした。

顔を上げて見ると美玖が居た。

俺達を見ながら笑みを浮かべている。


「戸ノ嶋...さん」

「うん。...御剣さん」


あの事件以降。

2人は呼び方を変えた。

それから今の様な呼び方をする様になった。

2人は見つめ合いながら苦笑し合う。

そして美玖は俺の横に腰掛けた。


「なにを飲んでいるの?」

「俺はコーヒーだ。御剣はジュースだな」

「じゃあ私もコーヒー飲もうかな」


そう言いながら美玖は立ち上がる。

それから自販機でコーヒーを買って座る。

そして飲み始めた。

俺はその姿を見つつコーヒーをまた飲む。

そうしていると美玖が「ねえ。なんの話をしてたの?」と聞いてくる。

俺達は見合ってから「円谷とか山口とかの話とかしていた」と応える。

美玖は「そうなんだね」と返事をした。


「...まあ...つまらない話だ」

「うん。分かった」

「戸ノ嶋さんはどこに行っていたの?」

「あ、進路指導の話で」

「進路...決めたの?」

「私は福祉系の大学に行くつもり。資格取る予定もあるよ」

「そう...なんだね」


御剣は考え込む。

それからジュースのペットボトルを見る。

それをゆっくり動かしながら御剣は黙りながら俯く。

俺は缶コーヒーの缶を捨てる為に立ち上がる。

そして見てくる2人のうちの御剣に「大丈夫だ」と切り出した。


「焦らずゆっくりに考えるべきだ。こういうのはな」

「...淀橋くん...」

「英二の言う通り。じっくり考えるべきかな。私としてはまだ時間があるって思うし」

「そうだね。確かに。少しだけ...心の中がスッキリしたかも」

「...なら良かったよ」


それから俺は伸びをする。

そして欠伸をしながら「戻るか」と話す。

御剣も美玖も頷きながら立ち上がる。

そうして俺達は教室に戻った。



私の罪。

将来の私の大切な人を裏切る真似をする罪。

だから私は彼が大切だからこそ。

今度の世界線では彼を裏切る真似をしない。

彼を裏切るのは死ぬ時だ。

私はそんな事を考えながら勉強をする。

そして放課後を迎えた。


「...そういえば私、昨日が誕生日だったな」


そんな事を呟きながら寂しげに教室を後にして帰ろうとした時。

背後から「待て」と声がした。

振り返るとそこに淀橋くんが紙袋を持って立っていた。

淀橋くんは紙袋を渡してくる。


「本当は学校にこんなもん持ってきたらダメなんだがな」

「これはなに?」

「お菓子。お前確か昨日が誕生日だっただろ」


それから「じゃあな」と手を挙げて淀橋くんは去って行く。

私はその姿を見つつ「...ありがとう」と呟きながら白い紙袋を見る。

中身は少し高価なクッキーだった。

なにかその。

涙が浮かんだ。

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