六 春霞一重
注射器の中に詰まった生々しいほどの血を、顕微鏡の
倍率は、四に十五を乗じた六十。
すこしも見逃してはならない。
「なにかわかった?」
「……話しかけるんじゃない」
十五に十五を乗じた二二五倍で映ったのは、粒状のものがひとつ、透明感のある
筆を執り、
「……これは……なに?」
「肝細胞ね。肝臓の六割を占めている細胞だわ」
医学に関しては初心者のしの字もない
「細胞というのは、生き物の最小単位。すべての生物は細胞の集合体でできているの。そして、肝細胞という細胞が集まって、肝臓という
四十に十五を乗じる。
視界は
視界に
「……
「へ?」
「
そして、
「受粉すると、遅効性のおしべの花粉と即効性の柱頭の片があわさって、
今回、
「
「その、びたみんけいわんというやつは
「そうでなかったら、
「……うん、だね」
◇
まず、
そして、それらを
そして、清潔な
それからだ。
太古の世で使われていたような石の塊の上にその
これが、
これだけの力をかけて圧しても、得られる搾り汁はほんのひと握りだ。三、四回ほど繰り返せば、ようやく汁碗一杯を
汁碗が充ちたら、菜種油をいれる。
「あれ。薬膳にしないの?」
「そんな遅い方法でやる
延々とそれを繰り返し、汁碗が五杯
山と
「これを固めるわ。ほんとうなら、ありとあらゆるものを使うのだけれど、今はそんな時間なんかないから」
何重もの嚢にいれた搾り汁と
「……これで空気を
「え。空気って、拔けるの? だって、どこにでもあるじゃないか」
「
「
完全なる真空にすることは不可能だが、限りなくちかづけることはできる。計算上、かかる時間は
頭の中で、花の
(今だ)
「なにそれ?」
「
果汁を搾り出し、砂糖水を加えて混ぜる。琥珀のような砂糖水だ。
「毒見して」
「僕が?」
「毒なんか入っていないけど、
「……
「よかった」
そう云いながら
(できた)
(急いで届けなければ)
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