11 会える君と、会えない君のこと
声のする方に行くと、机の下にレモンくんが横たわっていた。
「いや、どこにいんのよ!なにしてんのよ!」
笑いながら、夕雨はレモンを引っ張り出す。
金髪がボサボサになっていた。
「ああ、もうぐちゃぐちゃじゃん。」
手ぐしでレモンの金髪を整えていく。
レモンがふと、夕雨の手を取る。
ドキッとした夕雨の手が止まる。
「いや…ほんと、なにしてんのよ…」
「へへへ、ちょっと嫉妬しちゃって。」
「はあ?」
レモンの目が糸のように細くなる。
少し悲しげだった。
夕雨は何かを察したが、口にするのはやめた。
「リュック新しいの買おうと思ってて」
「え、それ相談しにきたの?」
「黒ばっかじゃなくて、最近はミッドナイトブルーとかあってさ」
「そうだね」
完全にレモンのペースに飲み込まれた夕雨だが、もう無理に追及しない。
楽しさの方が勝ったからだ。
何気ない会話を続け、やがて、意識がはっきりしてくるのを察して、夕雨は言う。
「そろそろかな。久しぶりに直接話せてよかったよ、また会おうね」
夕雨の言葉にレモンが微笑み、世界が閉じた。
*
リビングの自動消灯されたテレビの前、ソファに寄りかかっていた夕雨は目を覚ます。
「映画、どこまで見たっけ…いいや、今日は寝よう」
独り言を呟き、その日は寝ることにした。
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