11 会える君と、会えない君のこと

声のする方に行くと、机の下にレモンくんが横たわっていた。


「いや、どこにいんのよ!なにしてんのよ!」


笑いながら、夕雨はレモンを引っ張り出す。

金髪がボサボサになっていた。


「ああ、もうぐちゃぐちゃじゃん。」


手ぐしでレモンの金髪を整えていく。

レモンがふと、夕雨の手を取る。

ドキッとした夕雨の手が止まる。


「いや…ほんと、なにしてんのよ…」

「へへへ、ちょっと嫉妬しちゃって。」

「はあ?」


レモンの目が糸のように細くなる。

少し悲しげだった。

夕雨は何かを察したが、口にするのはやめた。


「リュック新しいの買おうと思ってて」

「え、それ相談しにきたの?」

「黒ばっかじゃなくて、最近はミッドナイトブルーとかあってさ」

「そうだね」


完全にレモンのペースに飲み込まれた夕雨だが、もう無理に追及しない。

楽しさの方が勝ったからだ。

何気ない会話を続け、やがて、意識がはっきりしてくるのを察して、夕雨は言う。


「そろそろかな。久しぶりに直接話せてよかったよ、また会おうね」


夕雨の言葉にレモンが微笑み、世界が閉じた。



リビングの自動消灯されたテレビの前、ソファに寄りかかっていた夕雨は目を覚ます。


「映画、どこまで見たっけ…いいや、今日は寝よう」


独り言を呟き、その日は寝ることにした。

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