第二章 第6話
木々や草花が成長して居る。見違えたと言う程では無く、子供向けの間違い探し程度の難しさと分かりやすさ。
誰かが草を刈った跡。木々には人工的な傷が稀にある。
「(人は確実に居るんだ。)」
会った事は無いけれど、お互い足跡などで把握はして居るのだと思う。少なくとも、自分は先生からの話もあってこの山に2人居るのは知って居る。
でも、今日は足跡が無い。
「....?」
石で出来た階段を上がって、比較的平坦な所で腰を下ろす。
「いつ見ても廃村だよな、本当に。」
ルベル含め同級生が噂する理由も分かる。人気も無い。道も景色もボロボロ。
「(自分も先生に言われなければ気付かないだろうな。)」
噂話の内容は様々だが、山の頂上に関する話が多かった。
まぁ、きっと知らないから怖いだけだと思う。それか面白がってるか。
暇潰しでスマホを見てると、教科書にもあった「旧人類」と言うワードが目に付く。
進化に対応出来なかった旧人類は亡くなって、もう居ないんだと。それもそうか。
「(オカルト系は盛り上がってんな〜。)」
人差し指を上下させながら他人として混濁する情報達を見ている。
不安定な状況で色々と縋りたいんだろう。自分もこの状況を楽しんでる人達の仲間入り状態だ。なぜなら、
「(この山...全部水に呑まれて無い。居るのかな、旧人類。)」
連絡がかかって来たと通知する鉄の板。折り返しする気になれず、適当に他の事で紛らわそうとしてるからだ。
もうここまで来たなら嘘を吐いて自身を正当化する理由は無い。
軽くなった足取りで上へと踏み入れた。
村は昔にしては大きく、民家は水に呑まれて居る。だが、数軒程ある大きい家は殆ど頂上に近く、村の上辺にあって呑まれて居ない。
確か村の柱的な存在が大きい家で、由緒正しい家系だと。
「ふぅ、」
自ら出て動く。おかしな事に、全く体が重く無くて軽い。
異変も特に無いし、先生が水から上がってはいけないと注意喚起したのは嘘では無いかと疑う。
「お邪魔しまーす...」
人気が無い。屍の様だ。
「(なーんて。...って、人居るじゃん。)」
ふざけながら大きい屋敷を探索して居ると、大きい畳の部屋で寝てる子が居るのが遠目から見える。
興奮した気持ちと若干の心配を抑えつつその場まで走った。
「生きてますかー?..は?」
畳を歩いて二歩目。
「あれ、?」
おかしい事に気づいてしまった。
慌ててか混乱か後ずさる。
「(この人、自分みたいな、)」
服は違えど、容姿、身長、肌質や傷跡まで完璧に一致して居る。最早自分そのものと言っても差し支え無いだろう。
肩が微妙に動いてる事から呼吸はして居る様だ。
「っ、とりあえず起きて。」
もう非日常の感覚に麻痺した自分の体は、好奇心で近づいて、躊躇いながらも揺り起こそうと自分に似た人間の肩に触れる。
触れた瞬間の出来事。
「え、」
視界が歪んだ。視界が暗転して自分が倒れたんだと理解する時間も無く、力は入らない。抵抗する選択肢も選べないまま意識が暗闇にドボンと落とされた。
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