第4話
「おはよーございまーす。」
後日。
携帯で学校が再開しているとの報せ。憂鬱なのを制服で隠して、施設の人達の朝食作りを手伝った。
先生は、制服を似合ってると言って笑う。初めて会った時より先生は小さくなった。
「(自分は...この制服が嫌い。)」
白くて汚れやすい。洗うのだって大変。スカートに苦手意識は無いけれど、面倒で鬱陶しく感じる事がある。制服自体が好きじゃ無い。
「(......言えないな、こんな事。)」
言えない煙みたいな駄目な言葉を朝食と共に流し込んでしまおう。
最後の一口を運んだところで、他の子供達が起きてくる。そこにノースとルベルの顔もあって、いつも通り朝が弱く夢現。首が座っていない赤子の様。
「ふっ、」と吐息混じりに笑うと、聞こえていたみたいで目が合った。
「プエラって、意外に朝強いんだ。」
「んー...いつも起きんのはえーなぁ」
「よく言われる。」
皿をシンクに置いて、部屋に戻る。
朝食が入っている胃が少し重く気持ち悪い。疲労がまだとれていない。
一つに束ねていた髪を解いて、服がシワになるとか気にしないでベッドに倒れる。
「(鞄、準備してる。日焼け止めは塗らないでいっか。髪...結ぶのめんどくさ。)」
頭の中がぐるぐる。
体を起こして、三つ編みを結ぶ。小さい時からしてたら、もう習慣になっていて無意識でも出来る様になっていた。
「(三つ編みする様になったのは..)」
ルベルが演劇の舞台袖で言っていた。三つ編みされたウィッグを触って、「三つ編みは幼さの象徴の様な物」なのだと。
確かに、最期のシーンで三つ編みが解かれる時、少しだけ大人っぽく見えてしまった。
それから自分は三つ編みを結ぶ様になる。
ずっと自分に対して「子供だから」と言う理由が使える様に。あわよくば時が止まれば良いのに、なんて。願掛けなのだろうか。祈りと言うのだろうか。
まぁ、髪を結ばないと邪魔だし。何気に習慣と化して居る。
コンコン
「プエラ〜。ルベルがヘアコテ借りたいって。持ってる?」
「ん。」「ありがと。」
なんか。変な考えを吐露してしまったが、2人の準備が自分より遅くて暇をする。って言うのもあるかもしれない。
「(そうだと良いな。)」
学校までの道のりはほんの少し遠い。小学生まで、帰るのが嫌で近くの山に行ったのも懐かしい。山は秋が一番綺麗だった。
「...」
「この山、てっぺんが見えないぐらい高いよね。観光名所なのかな?」
「整備されて無いので有名では無いですけど...。えーと、ある層には需要がありますよね。プエラ。」
「何?」
「良く行ってたじゃ無いですか。あの山、心霊で隠れた有名所なのに。何かそう言うのが起こったとか?」
ルベルの言葉で思い出す。ここは、殆どが廃村なんだと。養蚕が有名で、神社があって。昔は山を登り降りする電車もあったと。
小学生の時、先生に教えて貰った事。
「(同級生は心霊系でよく話してたっけ。)」
「で?どうなのプエラ。」
「....別に。そんなの一回も無かった。それにさー、一応住人は居るみたいよ。」
養蚕を継ぐ子と、その家の分家。そう付け足して、「会った事無いけど」とも付ける。
あぁ、久しぶりに山にでも行こうかな。
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