第17話「うんこを愛しすぎた男」

七日目の昼。



参加者の間で、“アキ”という名が急速に広まっていた。


彼女は、静かに排泄し、静かに差し出す。

食いやすい、やさしい、清潔感がある──

それは、**この地獄における“奇跡のうんこ”**として語られていた。



だが今日。

その“神聖なうんこ”に──狂った信者が現れた。



参加者番号13番。

髪はボサボサ、目は血走り、

そして──言葉のすべてに濁点がついていた。



「ア゛ギ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!」

「お゛ね゛が゛い゛だ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!ア゛キ゛の゛う゛ん゛こ゛を゛ッ!!く゛だ゛ざ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛い゛ッッ!!!」



校庭中に響き渡る咆哮。

地面にひざまずき、土を舐めるようにしてアキへ近づく。



アキは目を見開き、明らかに引いていた。


「……やめてください、ほんとに……」



だが13番は止まらない。


「み゛た゛ん゛で゛す゛ッ!!!お゛と゛と゛い゛!!あ゛な゛た゛の゛う゛ん゛こ゛が゛袋゛に゛落゛ち゛る゛瞬゛間゛を゛!!」

「そ゛れ゛は゛も゛う゛…っ!か゛み゛が゛か゛っ゛て゛て゛…っ!!」



アキは一歩、後ずさる。


「やめて……ほんとに無理です……」



13番は突如、袋を差し出し、叫ぶ。


「こ゛れ゛に゛し゛て゛く゛だ゛ざ゛い゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!ア゛キ゛の゛ッッ!!う゛ん゛こ゛を゛ッ!!!」



スピーカーが無情に割り込む。


「参加者13番、摂取未達成」

「処理を開始します」



「ち゛が゛う゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛お゛お゛ア゛キ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!」

「お゛ま゛え゛だ゛け゛は゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」



アキはひとこと。


「……本当に、気持ち悪いです」



ドグシャアアアアアッ!!!


地面に、袋と破裂音だけが残された。

彼の最後の絶叫は、血と濁点で歪んでいた。



アキはそっと呟いた。


「うんこって、静かに渡すものでしょ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る