第18話「彼女は、初出場で勝ち残った」

地獄のような前回大会。

そこに、1人の少女がいた。


アキ。16歳。



初出場。

うんこで人が殺されるというルールも、

最初は理解すらできなかった。



「……なんで、みんな……食べてるの……?」

「嘘でしょ……こんなの、ただの罰ゲームじゃん……」



でも、初日の夜に**“爆発音”を聞いた。**



1人、2人、3人……

“誰かのうんこを食べられなかった”というだけで、人が吹き飛んでいく。



アキは──泣かなかった。


ただ静かに、全体を観察していた。



「こういうのって、泣いた人から死ぬんでしょ」



その夜、アキは黙って袋の扱いを研究した。

どう渡すか。どの角度で出すか。

受け取りやすく、食べやすく、“嫌がられない形状”であること。



翌日から、アキの袋だけが“選ばれる”ようになっていた。



特別美人でもない。

愛想がいいわけでもない。

誰かに媚びたりもしない。


だが──

うんこに、誠実だった。



毎日、安定した匂い。

柔らかすぎず、硬すぎず、喉を通りやすい滑らかさ。

黙って差し出し、拒否されない。



「なんでお前のは、そんなに毎回食いやすいんだよ……?」


ある男が震えながら言った。

アキはこう返した。


「……“生きる”って、誰かにとって食べやすい存在になることじゃないの?」



最終日。

アキは、誰とも組まなかった。

最後の1袋を、黙って差し出し、

誰かのを黙って食べた。


それだけだった。



そして──彼女は勝った。



初出場、最年少、無交渉。

それでも彼女が生き残ったのは、

“誰よりも、人間を捨てる覚悟が早かった”からだった。

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