第4話 隣の席の金髪ギャル



 次の日。あの後、考えがまとまらずよく寝れなかった。早くに目が覚めてしまったので、早朝に学校に着いてしまった。

 まあ、一人で学級委員の仕事を終わらせておこうと思ったんだけど……。


「おはようございます。真島君。珍しく早いんですね」


 教室に入ると、窓を開けている神崎さんがいた。彼女の艶やかな黒髪が風になびき、太陽に照らされてキラキラと輝く。

 彼女の存在にギョッとした俺は、一歩後ろに下がった。


「っ⁈ 神崎さん⁈ お、おうおおうおはよう」

「奇怪な挨拶ですね。新種の鳥ですか」

「いや、それは……!」


 だって、仕方ないだろう⁈

 昨日、あんな話を聞かされているんだから、動揺しない方がおかしいだろう!


 逆になんであんなデレデレの会話をしておいて、ここでは真顔で対応できるのか分からねぇよ。あまりにもクールすぎるだろっ!


 二人きりの状況に、俺が冷や汗をダラダラ垂らしていると、ずいっと神崎さんが近寄ってきた。


「様子がおかしいですね。何かあったのですか?」


 あなたの気持ちを知ってしまって動揺しまくってるんですが〜〜〜???


 というか、なんでこんなに至近距離で見つめてくるんだ。俺は顔に力を入れて、動揺がバレないように神崎さんを見つめ返す。しばらく見つめ合った末、先に折れたのは神崎さんだった。


「……早く学級委員の仕事して下さいね。私は先生から呼ばれてるので、職員室に行ってきます」


 そうクールに言って、神崎さんはさっさと俺の前から立ち去ってしまった。


 取り残された俺は、呆然と立ち尽くす。


 ねぇ、なんで顔色すら変えないの⁈ 昨日の神崎さん、俺を前にするとドキドキするとか言ってなかったっけ? 本当にドキドキしてんの⁈


 昨日のあの会話は俺が生み出した悲しい妄想だったの〜〜〜っ⁈


 その後の神崎さんもいつも通りクールな塩対応。本当に昨日の会話は幻聴だったのではないかと疑い始めてしまうレベルである。


 悶々とした気持ちのまま学級委員の仕事をしていると、突然、勢いよく教室の扉が開かれた。


 教室に入ってきた人物は、俺の姿を見つけると、すぐにパッと顔を明るくさせて手を振ってきた。


「おっ、真島っちじゃーん。おはよ〜!」

「おう、結城。おはよ」


 彼女の名前は、結城あかり。俺の隣の席の女子である。


 いつも元気いっぱいでフレンドリーな彼女は、金色のサラサラな髪をサイドテールにしている。どうやらハーフで帰国子女らしく、金髪は地毛なんだとか。

 大きな猫目の瞳と小さな口から覗く八重歯がチャーミングで、彼女も椎名さんと同じくらい男子からの人気が高かったりする。


 神崎さんと一番の仲良しであり、よく一緒に行動しているところを見かける。


 そして……恐らく、昨日の神崎さんの電話相手は彼女だと思う。神崎さんは電話相手のことを「あかりさん」って呼んでたし、明らかに話し方が彼女だったからだ。


「真島っち、こんなに早く来るの珍しいね〜。何か悩み? どしたん? 話聞こか?」

「キモおじみたいに言うな。……普通に早く目が覚めたから、早めに学校に来て学級委員の仕事をしてるだけだよ」

「へぇ〜。えらいねぇ、うちの委員長は。飴ちゃんあげちゃおうねぇ」

「近所のおばちゃんみたいに言うな」


 そうツッコむと、結城はニヒヒと笑いつつ本当に飴を差し出してきた。せっかくなので遠慮なく受け取り、早速舐め始める。いちご味だ。うまい。


「飴うまい?」

「んまい」

「真島っちって、甘いものいける口なんだ?」

「ん? ……まあ、好きな方ではあるよな」


 というか、かなり好きだと思う。しかし、それを素直に言うのも恥ずかしかったので、絶妙に濁しておいた。


 結城は「ふーん」と言って、目を細めた。なんだ?


「ま、頑張ってよ。真島っちのこと応援してるからさ!」

「おう、ありがとな」

「いいえー。じゃあ、帰るね〜」


 結城は「ばいばーい!」と元気よく手を振って教室から出て行った。


 ……あいつ、俺に飴だけ渡して荷物も置かずに教室から出て行ったぞ。何しに来たんだ。


 まあ、女子の行動を理解しようとしても陰キャの俺には無理な話だ。まあ、そんなに深い意味はないのだろう。そうタカをくくっていたのだが……。



 その日の夜。


『まいやん、耳寄り情報だよ! 真島っちは、甘いものが結構好きらしい!』


 俺、そんなこと話したかなーーーーー⁈

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