第6話 放課後のファミレスイベント

色々トラブルはあったものの、僕、山君、天童さんの三人はプリントを無事に理科準備室へと運ぶことができた。


「山君、天童さん、助かったよ。手伝ってくれて本当にありがとう」


僕は二人にお礼を言った。


「気にしないでください!」

「どういたしまして!」


山君と天童さんはそれぞれ僕の言葉に返事をした。


これでミッションコンプリートだ。


僕たちは理科準備室を出て、教室へと戻る。


「でも良かった!紫電君が怒ってたんじゃなくて!スッキリしたよ!」


天童さんは僕と山君の数歩先を上機嫌に歩いている。


そんな中、僕の隣を歩いている山君が小声で口を開く。


「紫電君……さっき天童さんと話してた事なんですけど……」


「さっきの……ああ、僕みたいな陰キャと天童さんが話すと、天童さんの格が落ちちゃうって話?」


「そうです。天童さんはああ言ってくれましたが、僕も陰キャなので紫電君の気持ちが分かります」


「山君は分かってくれるのか?」


「はい……。めっちゃ分かります……」


「山君……」


僕と山君は立ち止まり、お互いに向き合った。


そして……。


「山君。僕を理解できるのは君だけだ。君が一番最初にできた友達で本当に良かった」


「こちらこそ、同じマインドを持つ紫電君と友達になれて光栄です」


僕と山君はガッチリと握手した。


「二人ともなんで握手してるの?」


天童さんはこちらを振り向いて尋ねてきた。


「友情を確かめ合っていたんだよ。ね、山君」


「はい。そうです」


天童さんは僕たちの言葉に「そうなんだ〜」と呟き、再び前を向いて歩き出した。


僕と山君も歩き出し、会話を続ける。


「それにしても天童さん優しすぎないか?さすがは "黒髪清楚ヒロイン" として『ヒロインランキング』に入っているだけの事はある」


「ほんとにそうですよね……。僕も二人の話を聞いていて感動しましたよ」


山君も僕と同じ感想らしい。


「それはそうと紫電君!この後、何か用事ありますか?」


山君の唐突な問いかけに僕は首を横に振った。


「いや、特にないけど」


「ほんとですか!?じゃあこの後、一緒にファミレスでも行きませんか!?友情を確かめ合った事ですし、何より僕は友達と放課後ファミレスに行く事が夢だったんですよ!」


放課後に友達とファミレス……だと……?


前の学校ではずっとぼっち生活だった。


そんな僕が放課後ファミレスイベント……。


絶対行きたい!


「うん!この後ファミレスに行こう!僕も行きたい!」


「ほんとですか!?やったー!!」


友達と放課後にどこか出掛けるなんて嬉しすぎる。


僕と山君はお互いに喜んでいた。


すると……。


「え?なに?この後ファミレス行くの?私も行きたい!」


「「……え?」」


突如として発せられた天童さんの言葉に、僕と山君はハモってしまった。


「二人だけでずるいよ!私も行っていいでしょ?」


天童さんは僕と山君の顔を見つめてお願いした。


……。


こんなの反則だろ。


断れるはずがない。


「や、山君……天童さんも一緒でいいよね?」


「も、もちろんです……」


僕と山君の言葉に天童さんは笑顔になる。


「やったー!今日は紫電君転校初日だから、転入祝いだね!そうと決まれば早く教室に戻ろ!」


天童さんはそう言うと駆け足で教室へと向かった。


……。


僕と山君はその場に立ち尽くしていた。


「ど、どうしよう山君……。僕たち陰キャが "黒髪清楚ヒロイン" の天童さんと一緒にファミレスだなんて……」


「ど、どうしましょうね紫電君……。まさか僕たち陰キャが『ヒロインランキング』上位の天童さんとファミレスだなんて……」


ただでさえ山君とファミレスに行ける事が嬉しかったのに、まさか天童さんまで来るなんて……。


「友達とすらファミレスになんて行った事ないのに、いきなり女子も一緒なんて……。僕にはちょっとハードルが高すぎるかも……」


「そうですよね……。しかも相手はあの "黒髪清楚ヒロイン" の天童美継……。僕たちじゃあまりにも荷が重いですよ……」


「だ、だよな……」


僕と山君はどうしていいか分からず、ただただ廊下に立ち尽くした。


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