第29話 逆襲の狼煙!運と知恵のコンビネーション

 フォルトゥナの試練――『月の女神の涙』を手に入れるため、俺たちは行動を開始した。

 情報収集の結果、その宝石を所有する大富豪が、近々開催される闇オークションにその宝石を出品するという情報を掴んだ。しかも、そのオークションにはシャドウコインの幹部も参加するという。

 一石二鳥だ。オークション会場に潜入し、宝石を(何らかの方法で)手に入れ、同時にシャドウコインにも一泡吹かせてやる!


 オークション当日。俺たちは、ミャレーの斥候スキルと、俺の【絶対幸運】(招待状を偶然拾う、警備員が急用で持ち場を離れるなど)を駆使して、厳重な警備を掻い潜り、会場である豪華な屋敷への潜入に成功した。

 会場内は、着飾った金持ちや、いかにも裏社会の人間といった風体の連中でごった返している。その中に、シャドウコインの幹部らしき人物の姿も見えた。

「よし、計画通りに進めるぞ」

 俺たちは、事前に立てた作戦に従い、二手に分かれた。

 リリアと魔法使いの少女(仮)は、オークション会場の裏手にある制御室へ向かい、会場の照明や警備システムを操作する準備。

 俺とフェン、そしてミャレーは、オークション会場で『月の女神の涙』が出品されるのを待ち、混乱に乗じて宝石を奪取する手筈だ。


 オークションが始まり、次々と高価な品々が競り落とされていく。そして、ついに目当ての『月の女神の涙』が出品された。月の光を閉じ込めたかのような、美しくも神秘的な輝きを放つ宝石だ。会場がどよめく。

 シャドウコインの幹部も、明らかにその宝石を狙っている様子だ。

 競りが始まり、値段がどんどん吊り上がっていく。

「……今だ!」

 俺の合図で、リリアたちが制御室から会場の照明を一斉に落とした!

「な、何だ!?」

「停電か!?」

 会場がパニックに陥る。その混乱の中、俺は【絶対幸運】に祈った。

 ――頼む、宝石が俺のところに転がり込んでくるように!

 すると、信じられないことが起こった。宝石を乗せていた台が、誰かに押されたのか(あるいは勝手に?)、バランスを崩し、宝石が宙を舞ったのだ!

 そして、まるで引力に引かれるかのように、俺の目の前に……ポトリと落ちてきた!

「よしっ!」

 俺は素早く宝石を拾い、懐にしまう。

「ミャレー、フェン、ずらかるぞ!」

「了解!」「ワォン!」

 俺たちは混乱する会場を抜け出し、脱出経路へと急ぐ。


 だが、そう簡単にはいかなかった。

「待て! 宝石を奪ったのは貴様らか!」

 シャドウコインの幹部と、その手下たちが追ってきた! さらに、屋敷の警備兵たちも駆けつけてくる。

「ミャレー、道を切り開け! フェン、援護!」

「任せて!」「グルル!」

 ミャレーが斥候の俊敏さを活かして罠を解除し、追っ手の足を止め、フェンが強力なブレスで道をこじ開ける。

 俺も剣を振るい、追っ手を蹴散らす。

 そして、シャドウコインの幹部と再び対峙する。

「また貴様か、カイ・ジンロウ! 我々の邪魔をするとは、許さん!」

「こっちのセリフだ! お前らみたいな奴らに、好き勝手させてたまるか!」

 前回とは違う。俺には仲間がいる。そして、運を味方につける術も、少しだけ身につけた。

 俺は、あえて幹部の攻撃を受け流し、背後の警備兵に誤爆させるように誘導する。【絶対幸運】が、その確率を微妙に引き上げてくれる。

「なっ……!?」

 幹部が動揺した隙を突き、フェンが飛びかかる!

「ぐあああっ!」

 幹部はフェンの一撃を受け、吹き飛ばされた。手下たちも、俺たちの連携の前に次々と倒れていく。

「くそ……! 覚えていろ……!」

 幹部は捨て台詞を残し、残った手下と共に撤退していった。


 俺たちは、追手を振り切り、無事に屋敷から脱出することに成功した。

 手には、『月の女神の涙』が輝いている。

「やった……! やったぞ!」

 俺たちは、互いに顔を見合わせ、勝利の喜びを分かち合った。シャドウコインに一泡吹かせ、同時にフォルトゥナの試練も達成したのだ。

 これで、フェンの呪いも解けるかもしれない。

 しかし、これで全てが終わったわけではない。シャドウコインの報復、そしてゼノンの存在。本当の戦いは、まだこれからだ。

 だが、今の俺たちなら、きっと乗り越えられる。そんな確信が、胸の中にあった。

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