第7話「なんでそんな適当な戦い方で上手くいくんだよ。」

「さあ、パワー全開放!!!」


 そう言って、腕から特大ビームを放った。


「これでどうだ!!!!!」


「そういうことか!細く長い路地に敵を集めて一気にビームで……」


 真紀が気づいた。


「だが、完全に敵を倒せてないとまずいな、もうスーツのエネルギーが持たない」


「たしかに……」


 すると、エネルギーが切れてきたのか、だんだん画像が荒くなり、画面が切れる。


「大丈夫か!?」

 

 だが、しばらくして優乃の声が聞こえてきた。


「おーい、聞こえるか?」


「お、優乃くん!大丈夫か?」


「ああ、少し歩いたが敵が動いたりはしなかったぞ」


「それにしても良くあんなこと思いついたな」


「なんかたまたまソシャゲで似たようなシナリオがあって、真似してみたら上手く行ったんだよねー」


「いやいやいや、なんでそんな適当な戦い方で上手くいくんだよ」


「別に勝てたんだからいいじゃん。あとさ、この作戦昨日の夜徹夜でソシャゲやってなかったらそのシナリオ出てこなかったから、実質僕のおかげやん」


「何こいつ、呑気にベラベラ喋りやがって」


「ははは……まあ勝ててよかった、とりあえず後の処理はこちらで何とかする、優乃くんは部屋に戻ってきてくれ」


「了解!」


〜優乃と野上の部屋〜


「とりあえずお疲れさん、これ報酬だってよ、敵来てない間は好きに遊べって」


「よーし、課金祭りだぁ」


「あんたねぇ……」


「そういえばさ」


「どうした?」


「戦ってた時に気づいたんだけど敵のアジト思ったより近いかもしれないんだよな」


「それってどういうこと?」


「いやあ、まあ感覚的な話なんだけど、結構あのロボット達まとまって来た気がして、俺の予想があってればその比較的まとまって来た側が敵のアジトの近くなんじゃないかなって」


 つまりは、その敵がまとまって来たおおよその道を辿れば敵のアジトが特定出来るかもしれない、ということだ。


「そういうことか……とりあえずそれなら父さんに伝えた方がいいんじゃない?」


「そうだな、とりあえず戻ってきたら伝えとく」


〜ゲレヒティヒカイターの部屋〜


「くそっ……このままでは計画が……」


 すると、彼の背後にあったパソコンが勝手に起動しだした。


「お困りのようですね」


「そ、その声は……我らの教祖様……」


「あなたの活躍はずっと拝見させてもらってますよ」


「とんでもない、全ては教祖様の導きのおかげですよ」


「そうか、ありがとうな。それはさておき、現在ピンチに陥っているようだな」


「そ、それは……」


「案ずることは無い、この私も精一杯の支援をしよう」


 すると、彼は画面の前で深々と土下座して言った。


「ありがとうございます、教祖様!!!」


「そんなかしこまる必要は無いよ。ただ、前回みたいなヘマはするなよ」


「もちろんです」


 すると、画面が消えた。

 その画面には、銀行口座に1億円が振り込まれた旨の通知が入っていた。


「我が親愛なる教祖様、この計画は必ず遂行してみせます……」


〜優乃と野上の部屋〜


 しばらくして、戦いの後処理をしていた正人が帰ってきた。


「2人ともただいま」


「あ、おじさんおかえり」


「お父さんおかえりー」


「おじさん、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけどいい?」


「別に構わないが、どうした?」


「それが、戦いの時に敵のロボットがまとまって来てた場所があったから多分大体の場所が分かるかもしれねえんだ」


「それは本当か!?」


「ああ、確か瀬木通りってところだったはず」


「瀬木通り……あっ」


「どうかしたのか?おじさん」


「瀬木通りはとある宗教団体の聖地がある場所なんだ、もしかしたらそれとゲレティヒカイターが関係あるのかもしれない。あくまで推測でしかないが前の事件でも名前が挙がることがあった」


「そういうことか……」


「とりあえずそこにも調査をかける、教えてくれてありがとう」


「別に俺はとっととこのテロを終わらせたいだけだし」


「素直になれよな」


「別にこれまでもこれからも素直だけど?」


「へー」


「なんだよその言い方」


「別に」


〜政府組織〜


 夜の政府組織内にとある2人の声が響く。


「おやおや、たしか君は刑事の野上くんだったかな、どうしたんだいそんな怖い顔で背後から銃なんか突きつけて」


 そう言ったのは政府の議員の1人、豪僧寺達也、現在は財務大臣を務めている。


「とぼけるな、全て知ってるんだろ。カルト教団、真正義団教祖のジャスティザーこと豪僧寺達也!」


「君は一体何を言ってるのかね?私はただの財務大臣だ、それ以下でもそれ以上でもない」


「もう裏は取っているんだ」


「そうか、でも、だからといって何かある訳でもないだろう」


「知ってるか?私は総理にこのテロに関しての全権を委ねられてる。そして、政府の動き、簡単に言えば政府のコンピュータの全てを閲覧、操作する権利を持っているんだよ」


 豪僧寺がピクッと反応する。


「実は例のロボットと戦ってくれたやつに教えてもらったが、そのロボットは瀬木通りからまとまって来たらしい。瀬木通りと言ったら真正義団の聖地がある場所だろう、すぐ関係があるとわかったさ」


「だ、だがそれだけで何があると言うんだ?」


「あとはな、財務省のコンピュータシステムに不審なアクセスが相次いでたんだ、いやあ、泳がせておいて良かったよ。警察の調査をかけて簡単にお前がシステムを使ってたことがわかったからな」


「まさか……罠だったのか……」


「罠というか、なんも警戒もせずに下手にアクセスを繰り返してたからな、勝手に自分の首を絞めてた、の方が正しいだろう。しかもそこで大胆にも1億の送金がされていた、送り先の情報は全く無かった、これは怪しいですよね、豪僧寺さん」


「だが、私があの宗教団体やら例のテロやらに関係しているなんて証拠はないだろう」


 勝ち誇った顔で言った。


「それは、前回のテロ未遂の時に調査済みですよ。」


「何っ!?」


「ただ、その情報が必要じゃなくなっただけで。あの時はお前の宗教団体との関与の疑いはあったがその前に犯人は捕まえられなかったものの事態が収束したからな」


「……」


「これは、関与を認めたということでいいですね?」


「……ふっ」


 豪僧寺が小さく笑う。

 

「何がおかしい」


「はっはっは!お前はいつかそうしてくると思ってたんだよ。だから、教団幹部の仲間も読んでおいたんだ、刑事のくせに背後に来る人間にも気づけないとは」


「これは、元刑事の……!?」


 そこに居たのは現役時代は正人の上司に当たる人であった元刑事の小木智也だった。


「まさか後輩を殺ることになるとは思わなかったが……お前は大きな間違いを犯したんだよ、さようなら」


 サイレンサーで小さくなった銃声が淋しく響く。

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