重厚にして、軽快。ハードロックにしてバラッド。スタイリッシュかつ泥臭い。そんな相反する2つの魅力が重なり合いながらも、せめぎ合う世界観と文章は、灰にまみれた世界でありながら、色味と匂いを確かに感じさせてくれる逸品。
そして、AI萌えという言葉があるのなら、私はもうAI=アリアの虜です。アッシュとの軽妙なやりとり、無茶ぶり、皮肉。その全てが愛おしい。
例えるならば、乾いた風の中でコールタールの海に沈められながらも血が沸騰する様な。まるでTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのGEAR BLUESを彷彿とさせる、本作はそんなハードボイルドSFアクション作品です。
その世界に、空はない。
かつて栄えた人類の文明は、核の炎と放射線に焼き尽くされた。
灰色の空、沈黙する都市。
それでも、生き残る者たちはいた。
地上に残り、生をつなぐ者たちが。
男の名はアッシュ。
廃墟と化した都市を、黙々と歩く『何でも屋』。
義手に銃を握り、AI「アリア」の声に導かれながら、彼はひとつの「記憶」に導かれている。
それは、ただの依頼でも、報酬でもない。
終わりなき喪失の果てに、彼が追い続ける『始まりの記憶』。
敵は、感情を持たない殺戮機械。
味方は、毒舌な人工知能と、自分だけ。
地下迷宮ネストシティで待ち受けるのは、過去に因縁を残す女帝リヴィア。
依頼は「借金取り」。
だが、その裏には、隠された真実が潜んでいた。
これは、終わった世界をさまよう男の、始まりを終わらせるための物語。
舞台は、レギオンという機械生命体が無差別で殺戮を続ける近未来。
人類がレギオンから逃れるべく地下に潜ってしまった時代。
何でも屋を営む主人公が、仲間達と世界の謎を追いかけていく、なんでも御座れな物語です。
壮絶なアクション。敵組織のやられ役。軽快な軽口。ゆる~い日常と食べ放題メニューのごとく多くの要素が詰め込まれています。
話数ごとにスポットライトを当てる登場人物が決まっていて、読み終えれば全てのキャラが好きになる。
物語はまだ序盤。主人公は世界の真実に辿りつくことができるのか。(そもそも論で言いますと、世界の真実を追いかけていないかもしれません)
三人称で地の文も多く、読んでいて描写が分かりやすい。
全ても読者様にお勧めさせてもらいます。
一読してみて下さい。