【PV 366 回】Beyond Wings
Algo Lighter アルゴライター
プロローグ 「翼なんて、いらなかった」
夏のおわり。
ただだましいセミが違う、白月市の近所の公園に、
それはそっと立っていた。
小さい背中。
柔らかい棒刀色の髪。
左腕にぶら下げられたスニーカーバッグ。
そして――左足に装着された、本物とは違うある細い線を持つ、翼みたいな機械の足。
ブランコのベンチに座り込んだ少女は、
日が沈むほど弱くなる光の中、そっと次のようにつぶやいた。
「翼なんて、いらなかった。
誰かと並んで笑えるならさ。」
『カシャン』と薄らい声が聞こえ、
公園の道路の向こうから、どたばたと走ってくる形式が見えた。
だらしない黒髪に、無造作な眼鏡。
振られるツナギ、そして把まれた工具箱から漏れる機械油の香り。
「おい! 大丈夫か?」
悩みもためらいもなく、その青少年は言った。
その手は、すこし汗で滑っていたけれど、
誠実に、謙そで、笑顔を欲しがっていた。
笑いかけようとして、少女は小さく首を振る。
心の何処にもたらない、あるいは大切な一等が、
その瞬間、たしかに繋がった。
――世界は、まだ不完全だ。
でも、違うまま、つながれる。
そんな未来を、二人はまだ知らない。
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