Ruta215(2)

オソルノ市 国道215号線




<<どうして撃った!!!>>

<<3小隊が勝手に、隊長が撃たれそうになったと、うわっ!>>



 無線機に向けて顔が引きつる。馬鹿野郎!撃たれたら撃て、と、撃たれそうになったら撃ては全然意味が180度違うじゃねぇか!!ヒューマンエラーを伝えるにも相手は既に戦闘をおっ始めてる。うかつに近づいたら噛み殺されるだけだ




<<攻撃やめ!攻撃やめ!各自隠蔽に再移動するか、高架まで後退!>>



パパパパッ!




『うおっ!』




 頭上を25㎜の銃弾が飛び去っていく。くそっ!くそっ!後方に居たRCVだ。戦車の主砲攻撃の間い中を埋める。こうなってくるともういけない、遮蔽と装甲のない部隊はロクに動けなくなる。だがしかし、手を拱いていてはいられない、今吹き飛ばされつつあるのは自身の部隊であり部下なのだ




『くそっ!こうなっちまったらサレルノの部隊も動かざるをえないか!?』




 そうなれば全面的な衝突は避けられない。俺の部隊が開戦の当事者だなんて冗談じゃないぞ。しかし、救援を呼ぶべき統率者はこの俺だ。現状は俺にそれを求めている。サレルノの部隊であれば、歩兵携行の対戦車火器も十分にあるし人力にも俺たちより優れる。だが・・・!




パラパラパラパラ




 遠くの空から、ヘリの飛翔音が聞こえてくる。連中の守りたかったものが来るわけだ、そしてここから飛べばもう手出しは出来ない。しかし、手出しができないからって何だって言うんだ。相手がなにを運んでるのかさえ俺たちはしらない。こんな時にするべきことか!?これが!




ババババババババ




 そこに、高空から響いてくる音響に加えて、重厚な音響が重なった事にハっとする。こいつはおそらく低空を高速で飛んできたな!?となるとそれは





国道215号線、戦脚




<<捜索中隊、こちらSAAのサーペント01、戦闘の形跡を発見した>>




 呼びかけるも放たれた機銃弾にまた一両のジープが吹き飛ぶ。そんな中に通信が割り込んでくる。SAA(support air artillery)は戦闘団の支援大隊が持つ攻撃ヘリ中隊だ。日本はその成立からヘリを砲科が扱っているため、空中砲兵とも呼称する





<<ザザッ・・ら金獅子、攻撃を受けた。現在防戦中、空港には侵入なし>>




 ノイズ混じりに再び金(キム)少佐の声も聞こえてくる。どうやら大過なく無事らしい。その事には胸を撫で下ろす





<<了解。まもなくゲスト到着。給油までの時間とエスコートを01と02。金獅子支援を03と04に受けている。うまく使え。オーヴァ>>




 その言葉が終わるやいなや、ほぼ同時にヘリがオーバーハングする。そしてゲストと呼称された大使館員らが乗るヘリもその姿を現す




<<ザッザザッ子よりサーペント03及び04、所有のペイロードを申告されたし>>

<<サーペント03より金獅子、40ミリ擲弾、20ミリガンポッド二本、ロケットランチャーを二本。サーペント04はATMを4発。代わりにロケットランチャーを下ろしている>>




バババババババ!




 頭から覆いかぶさるように低空飛行でやってきた戦闘ヘリの2機が上空で揺れている。川崎オ-11鵟(ノスリ)、陸軍がA129マングスタを参考に開発した攻撃ヘリだ。帝國陸軍の攻撃ヘリの特徴として対人攻撃能力をなによりも重視するという設計思想がにじみ出ている。その昔、砲兵部隊が歩兵部隊に守ってもらえないなら自力でなんとかするしかない、と観測機に掃射武器を積むという行為から派生したその系統は、世界的には機首に積むべき大型機銃を自動擲弾発射機とし、スタブウィングには弾量を確保できるガンポッドをというスタイルを確保していた。その分空対空能力は列強の中でも劣るわけだが、ヘリ対ヘリなぞやってられないが本音なのだろう






<<中隊各車へ、ゲストの離陸をもって国道5号線に戻りプエルトモントへ戻る。市街地を通るから、サーペント03と04は高架に乗るまでの直接支援ダイレクトサポートを>>

<<金獅子、こちら竹虎。音声データ収集。今回の攻撃はヒューマンエラーの可能性大。戦闘の拡大、ひいては市街地への被害拡大をもたらす行動は避けたほうが良いっス>>




 戦闘ヘリによる攻撃はロケット弾にしろ擲弾にしろ周辺に破片をバラまいてしまうし、効果が広くなる。一般人を大いに巻き込んだ戦闘になりかねない




<<竹虎、それは撤退のコースを変えろという具申というのであれば却下します>>

<<金獅子・・・竹虎了解。しかし、本機は高速移動には難あり、破棄したほうが良いっス>>




 戦脚の弱点は路上を全力で走る車輌には追随出来ないという事で。走る事自体は出来るが、それでもRCVや戦車には及ばないッス。撤退ともなればこの足の遅さが問題となるのは当初から念頭においていたッス。そもそも戦脚は設計コンセプトの時点でそこまで高速移動を求められていないッス。

 ともかく、機体自体は寄せ集めとはいえ機密の塊だ。処分するならしたほうがいい。それだけの火力は今ならあるッス




<<まだ手はあるから却下。ゲストが退くまで待機。各車各機は敵状の把握に努める事、発見次第射撃自由。いいわね?>>

<<了解>>




 手があるってどういう事か、とも思いつつも了解する。これ以上色々言うのは彼女の面子を潰す事になる。しかし、手ってなんスか手って。それに相手はこれ以上の動きをしてこない、連携しての動きを見せてこないって事はヒューマンエラーにしろ組織だっての攻撃じゃないのは確信して良さそうッスね




バババババババ




 そんなことを考えているうちに給油が終わったゲストが飛び立っていく。すぐに高度を上げて、ハンドアローに撃たれないようにしているあたり飛ばしてるパイロットもそこそこ腕が良さそうだ。まあ、これで任務は半分超えて成功。あとは生き残って帰るだけっスね




<<よし、竹虎。あんたのその戦脚、尻もちつけたわよね?道路に出なさい。向きは正面向いたまま!>>

<<出来るッスけど、アンタ一体何を、おおっ!?>>




 言われるままに警戒しながら道路に出ると、シチが主砲を最大俯角にして突っ込んでくる。ま、まさか!?道路が緩やかに坂でオソルノ側に傾斜しているからそこそこ俯角がとれている、股の間を通して砲身を差し込んで、まさかまさか!?




<<砲身が曲がっても構わないから跨りなさい!そのまま仰角を上げるから踏ん張れ!>>

<<無茶苦茶ッスよ!?>>




 一種のタンクデザントのような形で戦脚を踏ん張らせる。乗ってる間は金キムのシチもまともに撃てないだろうから、仮に攻撃があれば金狛のRCVだよりになる、なお戦脚のセンサーにも気を配らなきゃいけないが、振動が伝わってやりづらい!




<<間を開ける方がまずいでしょ、いくよ!>>




 それはそうなんッスけど、これは機甲科の果断さか。逃げていった相手を追い越さんばかりの勢い、いや、勢いじゃなくて追い越すつもりだこの人




<<マンパワーには負けるけど、人力である以上展開能力はこっちに劣る。機動しなきゃあたしたちじゃないわ>>

<<こちらサーペント03、だいぶ愉快なことをしているが大丈夫か>>




 多少笑いを噛み殺しつつ、上空のヘリからも心配した通信が来る、そりゃあそうだろう。上から見れば戦車の砲身にまたがった人型がバランスとろうとうねうねしてるんだから




<<サーペント03、こっちを見てる暇があるなら周囲を警戒して頂戴。以後私の発信以外封止、金獅子終わり>>

<<了解>>




 だいぶ殺気だった金キムの返信にサーペント03が少し高度をとる。ジャンクションまで突っ込めば視界が広がる。RCVの金狛たちは流石に金キムに指導されているだけはある。2台は前に、1台はシチの後ろに布陣してターレットを後ろに向けて続いている

 そうして彼らは国道5号線へと復帰し、警戒を厳としながらプエルトモントへと帰還した。オソルノの部隊からの攻撃が予測されていたが、それは無かった。それよりもチリにとって大きな事件が発生していたからだ。それが





 チリ第11州および第12州はチリ共和国より独立、パタゴニア首長国を名乗り、アルゼンチンはこれを即日承認。パタゴニア首長国は独立戦争としてその助力を得ながらチリに対して闘争を仕掛けてきたからだ。南米における混迷の色は、ますますその色彩を濃くしていくのであった

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