Episode 35 宝庫
「これ、私も作りたいですっ!」
気持ちが昂る私を、師匠が一瞥する。
「ムリやね〜」
「え゙……」
私のロマンをバッサリとぶった斬ったのであった。
「トウカ、忘れとらん? ジブンがArtやってこと」
「……まあ、そうですけど」
「Artっていうのは、あくまでリアリティ重視。こんなん作りたくても作れんやろ。……本物の鍛冶なんかやったことあらへんから実際どうなんかは知らんけど、少なくともうちは、こんなんが作れるとは思えへん」
「……」
ぐうの音も出なかった。
確かに、こんな奇抜なデザインの刀を作るなんて不可能だ。
小道具としてならいざ知らず、見掛け倒しになってしまわないような、武器としての役目を全うできるこんな刀は存在しない。
「仮にArtでもやっていけるような技術力の持ち主がいたとして、どの道、できることと言えば現実の模倣まで。リアルでできんことはこっちでもできん。そりゃ、Artも居らんようなるわな」
厳しい現実を突きつけられたとて、理解はすれど納得はできない。
だってやりたいんだもの。
もっともなことを言われてしまい、私はむぅと口を尖らせる。
そんな私を横目に、師匠がにやりと笑った気がした。
「無くはないねんけどな」
「えっ……!」
「ちょっとこっち来ぃ」
◇
「今から行くんはうちの倉庫や」
意味ありげに誘う師匠の背中に、私は疑い半分で付いて行く。
そこは〈トトロロ鍛刀場〉の裏にあった。ぐるりと歩いて1分もない場所。
そこにあるのは、倉庫と呼ぶに相応しい建造物。
小さめな商業施設の駐車場くらいのスペースに、でかでかと無骨さ丸出しで佇んでいる。
蔵のようなシンプルな作りながらも、随所に散りばめられた歯車や排気管がそれの厳重さを物語っている。
「うわー、めっちゃ久々に開けるわ。……番号覚えとるかな」
倉庫正面にある巨大シャッター、その脇に掌サイズの小さな蓋がある。
蓋の下部に空いた穴に指を差し、開き、顕になった、壁に埋め込まれたダイヤルキー。
8桁のダイヤルナンバーと向き合う師匠。
「なんやったっけ……」
そう言って固まること十数秒。
やっと思い出せたらしく、「せやった」と呟きながら、歯車型という凝ったデザインのダイヤルをカチカチと回し始めた。
「はち、み、つ、お、い、し、い、な……っと」
「……?」
急に何を呟いたんだろう。
と、少し考えたところで、語呂合わせだという結論に気付き、すぐさま頭から消し去る。
「師匠……私いるんですけど……」
「え? 何?」
無自覚……。
思わず呆れの溜息を吐く。
「暗証番号を口に出さないでください」
「あれ……うち、今、口に出しとった?」
「はい。出してましたよ。気を付けてください、本当に」
「んまあ、トウカやしええやろ」
何もええくない。
本気でこの人の雑把さが心配になってきたよ……。
こんな大きな倉庫。大事な物も沢山あるだろうに。
もう1つくらい、文句でも言ってやろうかというところで、巨大シャッターが動き出して遮られた。
壁に埋め込まれたような、あるいはそれが壁だとでも言いたげに並んだ数十個という数の歯車が、噛み合い、音を立て、なんの不都合も無く滑らかに回り出す。
その光景に――歯車が動くだけの光景にその一瞬、倉庫の中身や連れ出された理由以上の好奇心を覚えて、目が奪われてしまった。
ボタンを押せばなんでも勝手に動いてしまうような、利器の発展した文明社会において、僅かに古臭さを感じる前時代的機械。
それに言葉に表せない魅力――浪漫を感じるのは、私が未だに思春期を拗らせた中二病だからか。
ただ、間違いなく言えることは――シャッターが開ききったとて私のワクワクは収まりきらない。
「うちの秘蔵のコレクションたちや。触ってもええで」
「すごい……!」
都会の雪のように浅く積もった埃には目を瞑るとして。
意外にも整理されたその倉庫に、種別ごとに立ち並ぶ武器防具アイテムなどの数々。
まだゲーム初心者から抜け出せない私にとっては当然始めて目にする物ばかり。
「あれは……」
瞳が擦り減ってしまいそうなくらい、あらゆる物に目移りした後。
その他全てを通り越して、それに釘付けになってしまった。
最奥に、眠るように立ち尽くす、巨大装置――いやこれは、まるで、
「ロボット……?!」
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