Episode 33 ステータス

 その1。〈廻鹿の角笛〉を吹き、〈廻鹿ギアー・ディアー〉を召喚する。

 その2。〈命刀〉で自分の首を掻っ切る。

 その3。歯車の角の回転が止まって弱体化した〈廻鹿ギアー・ディアー〉を攻撃する。


 1体倒すのに、角笛で呼び出す時間も含めて約30秒。

 開始して数分と経たずに作業と化してしまったボス討伐だった。

 


「ますます、さっきの茶番の必要性が分からなくなってきたんですが……」


「ん〜、特に意味は無いわな」


 さらりと言う師匠に私は呆れて、開いた口が塞がらない。


「私、めっちゃ必死で戦ってたんですけど」


「そうやって必死に戦うのが好きって人もおんねん。もしトウカがそっち側のプレイヤーなんやったら、初見の楽しみ奪ってまうのは可哀想やん? ま、トウカはそうじゃなかったみたいやけど」


「私が、楽できるなら楽したい側の人間で悪かったですね!」


「いや、悪かないけど……もしかして怒ってる?」


「いえ別に。楽できて感謝してますよ。とても」


「な〜、悪かったって〜! 機嫌戻してぇやぁ〜」


「だから怒ってませんって」


「ほら、怒っとる!」


「怒ってないです!」


 そんな水掛け論をしている内に、討伐数は10に達していた。

 〈廻鹿の角笛〉と〈命刀〉が尽きたらしく、やむなくレベリング? が終了すると同時、喧嘩とも言えないような軽い言い合いも自然と終りを迎えた。







「案外早くに終わったなぁ」


 私のステータスを確認して、満足気に頷く師匠。


「お、もうLV20やん。結構いったなぁ」


「私にも見せてください」


「ええけど……自分で開けばええやん、ステータス」


「開き方が分からないんです」


「なんやそれ」


 はは、と笑う師匠。

 どうやら冗談だと思っているみたいだ。

 なんだか悔しかったので、「本当ですよ」とは言わないでおくことにした。

 

 覗き見たウィンドウには、数字がずらりと並んでいる。

 プレイヤーの情報を羅列したそれは、ステータスというらしい。

 一番上に、〈トウカ〉と私の名前が表示されたそのステータスというものに、ざっと目通してみる。



――〈トウカ〉――

レベル「20」

所持金「80,000」

―― STATUS ――

ポイント「115」

HP「290/290」

SP「195/195」

物攻「48」

魔攻「48」

物防「48」

魔防「48」

技巧「48」

幸運「48」

―― WEAPON ――

〈命刀〉

―― ARMOR ――

頭〈――〉

腕〈――〉

胸〈革の胸当て〉

腰〈革のズボン〉

足〈革のブーツ〉

アクセサリー①〈――〉

アクセサリー②〈――〉

――――――――



 所持金がかなり増えているということに気が付く。

 どうやらこの世界ではモンスターを倒すことでもお金を手に入れることができるみたい。

 10体倒して8万Gゴールド(この世界の通貨の名称はGゴールドと言うらしい)ってことは、〈廻鹿ギアー・ディアー〉1体につき8千Gってとこかな。


 8万あるということは、この世界に来て初めて自分で購入した1本1,000Gのペインティングナイフおよそ80本買えてしまう(買わないけど)。


 ペインティングナイフ(中古)以外の物の値段の相場を知らないので、この数字が多いのか少ないのかイマイチ分からない。

 ま、暇つぶしにバザールへ繰り出すくらいはできそうだね。



 それにしても――



「ほとんど何書いてあるのか分かんないです……」


 改めて所持金以外の箇所にも目を通してみるも、理解不能な単語や数値が、頭をするすると抜けていく。


「せやな、初心者だとそりゃそうなるわな」


 そう言って、単語を上から順に指で辿り、解説をしてくれた。







〈ポイント〉

――レベルが上がることで獲得する、特定のパラメーターを任意で上昇させることができるポイント。1レベル上がるごとに5ポイント獲得。10レベルごとには、代わりに10ポイント獲得。


〈HP〉

――通称ヒットポイント。生命力のこと。これが0になると、プレイヤーが死亡扱いになる。1レベル上がるごとに10上昇。


〈SP〉

――通称スキルポイント。スキルというものを使う際に消費する……らしい。1レベル上がるごとに5上昇。


〈物攻〉

――物理攻撃力の略。物理的な攻撃力を意味する。1レベル上がるごとに2上昇。


〈魔攻〉

――魔法攻撃力の略。魔法や魔術(って何?)に関する攻撃力を意味する。あとは同文。


〈物防〉

――物理防御力の略。物理的な攻撃に対する耐久力を意味する。そして同文。


〈魔防〉

――魔法防御力の略。つまりそういうこと。


〈技巧〉

――主に生産職における技術力を意味する。高ければ高いほど、より良い効果のアイテムが完成する。


〈幸運〉

――名前の通り。宝箱から得られるアイテムのレア度だったり、攻撃のクリティカル率(?)、生産品のクオリティー補正(???)などの、一部のランダム要素に影響するらしい。







 一通り説明してもらうも、中々理解しきれずにもう一度。

 というのを5回ほど繰り返した辺りで、音を上げる。


「さっぱりです」


「……まじかぁ。……普段当たり前に理解してることを、してない人に説明するって、めっちゃ疲れるんやな」


「なんかすみません……」


「いや、うちのほうも、なんかごめんな……」



 恐らく大体は覚えれたので、ここらで諦めることに。


 とりあえず、ばーってレベルを上げたらがーって強くなるというのは理解できた。

 それと師匠が説明下手ということも知った……。

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