片恋禁止病~想うほどに、透明になる君。
青居緑
第1話
誰かを想って、透明になって死んでいく君は、とても美しかった。
【アポトーシス(apoptosis)】管理・調節された細胞の自殺。プログラムされた細胞死
「片恋禁止病」と、その病は囁かれた。
人を好きになり、片恋が続くほど、肉体が失われていくのだ。まるで恋が実らぬことに絶望した肉体が自死していくように。
突如現れたその疾患は、なんらかのウイルスが原因とも言われたが、病原体はみつかっていない。片思いの感情が感染するなどという言説もあり、当初は荒唐無稽だと一笑に付されたが近頃はそれもあり得るのではないかと一部で囁かれている。いずれにしても、原因は不明のままだった。
発症しても恋が成就すれば回復するが、振られてしまえば一気に症状は加速する。進行速度は人によるが、最悪死に至る。
中には同情して愛もないに交際を始める例もあったようだが、そのまま情がわくこともあったものの、破綻して再発することも少なくなかった。
発症頻度は三千人に一人程度と、通常の生活をしていれば患者と出会うことはそうそうない。
実際には発症すると人前を避ける者が多く、目の当たりのすることはそれほど多いことではなかった。だが、じわじわと確実にその病は世界に広がっていた。
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