第6話 貴族のお茶会

「まったく、何考えてるんですか!! いくらなんでもやりすぎですよ! 俺だって男なんですから、あんなことされたらマズいとは思うけど身体は反応しちゃいますよ!」

 

 お風呂から上がった俺は即行でメルクさんに文句を言いにいく。

「ごめんごめん、だって……。ねぇ〜?」


 メルクさんは周りのメイドさんに視線をむけると周りのメイドさん達も笑いながら頷く。酷い、メイドさん達が全員頷いて同意してる。

「なんで全員頷くんですか! 悪いのはメルクさんじゃないですか! 俺、悪いことしましたか?」


 頷くメイドさん達に意見を求めると同時に俺の後ろの扉が開いて『フグッ』と言う声と肩に何かが当たる。

「もぅ〜っ、なんで扉の前に立ってるの! 思いっきり鼻が肩にぶつかったじゃないですか! 痛い……。血、出てないよね? うん、大丈夫みたい」


 そういって、声の主は俺を回り込み部屋に入り『令嬢の皆様がご到着しました』そういって振り返ると、イリス先輩が『ほらっ、行くよ』と言って俺の手を引っ張る。

「ちょっ、待って! 行くって何処に行くんですか?」

 

 イリス先輩に腕を掴まれ、連行された先には………。

「ウィル君、卵とバター取って! それ今からもう1品必要だから任せていい?」


 俺はイリス先輩に卵とバターを渡して薄力粉と向かい合う。

 さて、何を作ろう? 貴族の令嬢の方々がお茶会で食べるお菓子……。

「レーズンってありましたっけ?」


 後ろでバタバタと盛り付けをしているイリス先輩に尋ねると彼女はメモ用紙を見たあと頷き、俺の頭上にある壁掛けのキッチンラックを指差す。

「そこのラックの右側奥の茶色の大きな瓶の中がそうみたい」

 と言って、彼女は自身の仕事に戻る。


「このレーズンと角チョコを使って……」


 まずはボウルに薄力粉・砂糖・塩・ベーキングパウダーを入れ、泡立て器で混ぜて……。

 次はよく冷えたバターを入れ、全体を切るように粉とバターを合わせていって粉チーズ状になったら牛乳を少しずつ加えていき、手で何回か折りたたむ様にひとまとまりにしていく。

 あとは角チョコを加えて製形した物をオーブンで焼きあげれば……。

「よし、出来た! チョコレーズンスコーン! やっぱり貴族の令嬢がお茶会で食べるお菓子っていったらスコーンだよね!」


 出来上がったチョコレーズンスコーンを持っていくとイリス先輩は怪訝そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる。

「なんですか? これ?」


 おっと、どうやらこの世界にはスコーンが無いらしい。

「1つ食べてみてください。美味しいですよ」


 スコーンを1つ摘んでイリス先輩の口元に運ぶ。

「んんー、私の方が先輩なんだけどな? なんか餌付けされてるみたいで嫌だなぁー。でもいい香りで美味しそうだから許す」


 そういって俺の摘んだスコーンに齧り付く。

「合格!! めっちゃ美味しい!」


 2つ目、3つ目と手を伸ばそうとしてきたのでスコーンを盛り付けてお茶会に持っていってもらう。

「もう1個! もう1個だけぇー!!」

 

 イリス先輩の口にあったのか名残惜しそうにスコーンを見つめて呟く先輩の後ろ姿はどこか寂しげだった。


 

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