後編
第12話 告白(リカ)
丸神大学の学生寮は入口が1つで、入って右が男子寮、左が女子寮。入り口を入ったところには男女共用の団らんスペースがあってテーブルに椅子、テレビ、雑誌や本が並んだ棚が配置されている。本はたぶん歴代の卒業生が置いて行ったもので結構たくさんある。将棋や囲碁、オセロ、人生ゲームに麻雀セットも先輩の置き土産であると思われる。その奥に男女共用の食堂がある。浴室、洗濯場、物干しは男女別になっている。1年生、2年生は4人部屋で3、4年生は2人部屋が割り当てられる。
今日は2月14日。夕食後、ケンジはリカに電話で呼び出されて共用の団らんスペースにいる。
「はい。中山君。バレンタインのチョコ」
「ああ、今日はバレンタインデーか。すっかり忘れてたわ。サンキュー!」
「中山君、あたしさ、中山君が好きなの」
「え!?」
「そんなに驚かなくてもいいでしょ? 前にも1回告白してるし。あのときは玉砕したけどやっぱり諦められなくてここまで追いかけて来ちゃったって訳なんだけど」
「…… え?え? ……告白って?……いつ?」
「高3のバレンタインデーのときチョコ渡したでしょ。そのとき好きですって言ったじゃん!」
「あー… あれって義理チョコだって思ってた。好きって言うのも冗談でみんなに言ってるのかなって」
「はあ!? そんな訳ないじゃん! それじゃ伝わってなかったの? 私、あの後めっちゃ落ち込んだんだよ!」
「ごめん…… まったく気が付かなかった」
いっつも広田君と一緒にいて広田君の陰になってたから目立たなかったけど中山君は女子の間で結構人気があった。2人ともハンサムだけど
「じゃ、今度こそちゃんと考えて返事して!」
「分かった。でもごめん、ちょっと考えさせてくれないかな」
「…… 分かった。3日だけ待つ。3日後に返事を聞かせて!」
「うん、分かった……」
*
リカに告白されたその晩、またソウちゃんの夢を見た。俺、このままだとどうなるんだろう。朝目覚めてぼーっとした頭で考える。ソウちゃんに俺の気持ちを伝えることはできない。ソウちゃんを忘れるためにリカとつきあうなんて考えられない。リカにも失礼だし。それにもしかしたらソウちゃんも俺をっていう淡い期待がまったくないと言えば嘘になる。もし気持ちを偽ってリカと付き合ったらソウちゃんの気持ちを踏みにじってしまうことになる。ソウちゃんが俺をどう思っているかを確認することが先決だと言うことは分かっているがそれはできない。で、堂々巡りになる。こんな堂々巡りを俺はいったい何万回繰り返してきただろう。そしていつまで繰り返すのだろうか。
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