第11話 手と手をとったら(物理も魔法も)大爆発!?
まずい! まずいまずいまずい!
俺、風間ハヤテの脳内アラートが、けたたましく鳴り響いていた!
目の前では、連携の取れた敵班の襲撃によって、ぽこさんとレイさんが完全に分断され、囲まれている! ぽこさんは数人に押さえつけられ、自慢の怪力も封じられているし、レイさんも多方向からの攻撃に翻弄され、消耗しているのが見て取れる!
(このままじゃ、二人ともやられる…! 俺が、俺がなんとかしないと!)
茂みの中で唇を噛み締め、俺は意を決して飛び出した! 目指すは、敵の術者に集中攻撃を受けているレイさんの元だ!
「レイさん!」
敵の攻撃を必死で避けながら、俺は彼女のそばへ駆け寄る!
「このままじゃやられます! 俺に考えがある! どうか、協力してください!」
「フン、今さら何を…! あなたの作戦なんて、どうせあの狸のせいで…!」
レイは息を切らせながらも、いつもの調子で反論しようとする。だが、今の俺にそんな時間はない!
俺は、勢いのまま、レイさんの手――少し冷たくて、驚くほど華奢な手を、強く握りしめた!
「お願いします、レイさん! 今、この状況を打開できるのは、あなたとぽこさんの力だけなんです! 俺に、力を貸してください!」
俺は、至近距離から彼女の青い瞳を真っ直ぐに見つめて、必死に訴えかける!
「なっ…!?!?!?」
突然手を握られ、至近距離から懇願されたレイさんの反応は、劇的だった。
普段のクールビューティーぶりはどこへやら、顔をカアッと真っ赤に染め上げ、握られた手と俺の顔を交互に見ながら、完全にフリーズしている! その黒い猫耳も、驚きと羞恥でへにょりと垂れ下がっているように見える!
「な、ななな、何を…!/// い、いきなり人の手を握るなんて、無礼ですわよ!// ば、バカ!//」
しどろもどろになりながらも、振り払おうとはしない。…いや、完全に混乱してて、それどころじゃないのか?
「頼みます!」
俺がもう一度強く言うと、レイさんは深呼吸を一つして、潤んだ瞳で俺を睨みつけた(が、迫力はない)。
「…っ! わ、分かりましたわよ!// 今回だけ、特別ですわ!// …そ、その手、早く離しなさい、この変態!//」
後半はほとんど悲鳴みたいになっていたが、とにかく協力の了承は得た! やった!
「ありがとうございます! 次はぽこさんだ!」
俺はレイさんの手を(名残惜しい気もしたが)パッと離し、今度は敵に押さえつけられているぽこさんの元へ駆け寄る!
「ぽこさん! 聞こえますか!」
「むむむ…離すでござる~!」
数人がかりで押さえつけられ、ぽこさんは苦しそうだ!
「ぽこさん! このピンチを切り抜けたら、俺が! あの駅前の和菓子屋の! 特大かしわ餅! しかもずんだ餡とこし餡のハーフ&ハーフを! ご馳走しますから!!」
俺はありったけの大声で、彼女の食欲中枢に直接訴えかける!
「……!!!」
効果はてきめんだった!
ぽこさんのタヌキ耳がピクンと立ち、その瞳にギラリと光が宿った!
「と、特大…かしわ餅…! ずんだとこし餡の…ハーフ&ハーフ…!?」
よ、よだれが出てる! 完全に食欲に意識が切り替わった!
「ほ、本当でござるか!? ハヤテ殿! 約束でござるぞ!?」
「ああ、約束します! 男に二言はありません! だから、俺の言う通りに動いてください!」
「合点でござるーーーーっ!! かしわ餅ーーーーーっ!!!」
次の瞬間、ぽこさんを押さえつけていた敵班の生徒たちが、文字通り吹き飛ばされた!
「「「ぐわーーーっ!!?」」」
かしわ餅への渇望が生み出したのか、ぽこさんの怪力がリミッターを解除! まるで爆発したかのように、周囲の敵を薙ぎ払ったのだ!
「よし! レイさん、今です!」
俺が叫ぶ!
「言われなくても!」
赤面状態から立ち直った(?)レイさんが、目にも留まらぬ速さで動く! ぽこさんが作り出した突破口から敵陣へと切り込み、その華麗な体術と忍術で敵を翻弄し始める! 風に舞う黒髪! 鋭いクナイ捌き! 真剣な青い瞳! …やっぱり、この人、めちゃくちゃ綺麗でかっこいいな…!
「ぽこさん! レイさんの援護を! 正面から突っ込んでください!」
「かしわ餅のためでござるー!」
ぽこさんは、もはや思考の大部分がかしわ餅に支配されているようだが、その単純さ故に、俺の指示通りに動いてくれる! 肉弾戦車と化したぽこさんが、正面から敵の防御陣形に突撃! その圧倒的なパワーとタフネスで、敵の防御を粉砕していく! 振り回される尻尾ですら、もはや鈍器だ!
「レイさん、敵リーダーは右奥の指示役です!」
「そこですのね!」
「ぽこさん、そのまま真っ直ぐ! 敵の注意を引きつけて!」
「ぽんぽこー!」(もはや意味不明な雄叫び)
俺の(たぶん)的確な指示と、ぽこさんの規格外のパワー、そしてレイさんの洗練された技術。バラバラだったはずの三人の力が、この瞬間、奇跡的に噛み合った!
ぽこさんが敵を引きつけ、レイさんがその隙を突く! レイさんが敵を撹乱し、ぽこさんがまとめて薙ぎ払う!
「な、なんだこいつら! めちゃくちゃだ!」
「連携が取れてないようで、取れてる!?」
「だめだ、撤退! 撤退ーーーっ!」
さっきまで有利だったはずの敵班は、俺たちのハチャメチャな連携攻撃(?)の前に完全に混乱し、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。
「…………」
後に残されたのは、破壊された訓練場の一部と、息を切らした俺たち三人だけだった。
「はぁ…はぁ…やった、でござるか…?」
ぽこさんが、お腹を押さえながら(かしわ餅のことを考えているのだろう)言う。
「フン…まあ、当然の結果ですわね…はぁ…」
レイは息を整えながらも、ちらちらと俺の方を見て顔を赤くしている。まだ動揺が収まっていないようだ。
「はぁ…はぁ…な、なんとかなった…のか…?」
俺は疲労困憊で、その場にへたり込んだ。
絶体絶命のピンチを、なんとか乗り切った。ハヤテの必死の説得(という名の買収とセクハラまがいの接触?)が功を奏したのか、あるいはただの偶然か。
だが、レイさんの心に、明らかに何かが芽生えたのは間違いなさそうだ。そして俺も、彼女の意外な一面に、少しだけ…いや、かなりドキドキしてしまった。ぽこさんは…まあ、通常運転だな!
この複雑怪奇な三角関係(?)は、これからどうなっていくのか? そして、この凸凹トリオは、本当に忍者学校でやっていけるのか?
とりあえず、今は…ぽこさんに約束した、特大かしわ餅のことを考えなければなるまい…。ああ、またバイト代が…。
俺の胃痛は、勝利の余韻と共に、新たな悩みの種を抱え込むのだった。
(続く)
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