第4話 このまま奪われたままでいいの?
手毬side……★
「ねぇねぇ、知ってる? 青野くんと山本さんが付き合ってるらしいよ?」
「えー、あの手が早いって有名な遊び人の青野くん? うっそー、それじゃ山本さんも青野くんの餌食になっちゃったんだー」
「青野くんとエッチした子って沼るらしいからね。相当テクニックあるんだろうねー。私も一回遊ばれてみたいわ♡」
くっ、くたばれリア充め!
青野の噂を耳にし、俺の絶望はどんどん深まっていった。テクニックってさー、結局妄想だけじゃどうしようもない分野だろ?
どれだけ実践を重ねてきたんだよって話だ!
「俺はずーっと日向一筋なのに! なのに何でポッと出の奴に奪われないといけないんだよ!」
「そりゃー、手毬が日向の告白を断ったからでしょ? 自分の愚行を棚に上げて青野に遠吠えしてんじゃないよ」
どストレートに傷口を抉る言葉に、俺は何も言えなくなった。
確かにそうなんだけど……!
そもそも俺が天邪鬼にならなければ何てことなかったんだけど!
狼狽える俺を嘲笑うのは親友である
ゲーム同好会の部室で、秋は持参している携帯ゲームの画面に視線をやりながら辛辣な言葉を発し続けた。
「そもそもさ、手毬と日向じゃレベルが違ったし、諦めるには丁度良かったんじゃない? きっと手毬の良さを理解してくれる女の子が現れるって」
「そんな簡単に言うなよ。生まれてこの方十七年、告白どころか女子に褒められたことすらないって」
「手毬の回りの連中って見る目ないねー。身長は低いし性格も捻くれているけど、意外と優しくて掘り出し物なのにね」
制服のスカートの下に履いているスパッツを露わにしながら、秋は椅子の上に
ボーイッシュで中性的な見た目をしている秋も、日向に劣らず人気のある女子だ。
——とは言え、どちらかと言ったら男子よりも女子に人気のある王子様キャラのようなポジションではあったが。去年のバレンタインだなんて、男の俺よりもチョコをもらっている始末で、羨ましいったらありゃしなかった。
「今からでもたくさん牛乳を飲んで身長を伸ばせば、数年後には青野から略奪できるんじゃない? くくっ、その時には日向、青野に孕まされている可能性あるけど」
「え、縁起の悪いことを言うな! お前さぁ、言霊の力を信じてねぇだろ? 口に出すと現実になるんだぞ⁉︎」
だが、秋は「へー、へー」と適当な返事をするだけで、全く反省している様子を見せなかった。
「ってかさー、冗談抜きで本当にヤバいんじゃない? よりによって青野とかさー。勝ち目ないじゃん手毬」
「だからこうして相談してるんだろ? くっ、俺だって……こんなことになるなら、もっと早く日向に告白したのに」
「でも、今までの後悔も全部含めて運命だよね。諦めなよ、本当に。慰めでも適当な言葉でもなく、ボクは手毬はいい奴だと思ってるよ? アンタならすぐにいい彼女ができるだろうから、簡単に心変わりしたような女に未練タラタラすんじゃないって」
「それが出来てりゃ、こんなに片想いを拗らせたりしねぇって。俺がどれだけ日向のことを好きか、秋もよく知ってるだろう?」
そう、高校からの関係ではあるが、俺が唯一本音を語れる相手が秋なのだ。
今までどれだけの相談をしてきたことか……。
すると秋は少し唇を尖らせて、面白くなさそうに口角を下げた。
「……あー、そうだね。ボクが聞いてないことまでペラペラと語ってたもんね。本当、どれだけ日向のことが好きなんだろうって呆れるくらいだったなー」
「あ、秋。もしかして怒ってる? あまり聞きたくない話だった?」
秋の反応を見て、過去の自分を悔やんだ。
今までは何も言わずに聞いてくれた秋に甘えていたけれど、もしかしたら聞きたくなかったのだろうか?
確かに他人の恋愛事情なんて、面白くも何ともない。だが、そんな俺の心境を察したのか、秋はニッと笑みを浮かべて、何事もなかったかのように笑い飛ばしてきた。
「何だよ、もうー。ボクは手毬の味方だって。相手が誰であろうと、ボクは手毬の幸せを願ってるからさ……。って言うかさ、手遅れになる前に行動しなよ?」
「て、手遅れって何だよ!」
「そりゃー、日向の身も心も落とされる前にって……あー、もう落とされてるからどうしようもないっか?」
「も、もうこれ以上、俺の心を抉らないでくれ‼︎」
「あはは! まぁーさ、本当に……頑張りなよ? 手毬が元気ないとボクまで元気が出ないからさ」
秋のエールを受け取って、俺は再度日向と話し合う覚悟を決めたのであった。
————……★
Special thanks!✨
タグやん様、タンティパパ様、tomo1015様、nutron5405様、ナカムラ マコ様、土田ヤスタカ様、nagashio様、★ありがとうございます!
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