第17話
※
家の裏手に建つ、簡易の倉庫。
鋤や鍬・肥料といった用具のほかに、いくつもの漬物樽が置かれていた。昔ながらの木の樽で、風合いが懐かしい。
「じーちゃん、なんでこんなに漬物あんのさ……」
「や、やかましい。そりゃあ、お前らの好物だからに決まっとるだろうが!」
茂雄が背中を向けて、言葉を濁す。
ユキもママも、茂雄の作る漬物が大好物だった。しょっぱすぎず旨味たっぷりで、ご飯がご飯がススムくん。
「じーちゃんの漬物、ずーっと食べたいな!」
子供の頃のユキの言葉。それは茂雄の宝物。
ママとユキは、じーちゃんがなんとなく送り続けていると思っていたけど、それはノーノー。茂雄の生きがいは盆栽じゃない。家族に送る漬物だったのさ。
――あたしたちのために、ずっと作っててくれたんだ……。
ユキ、ちょっとジーン。そっと笑う。
「しかし、漬物なんかが効くんか?」
「だって葵さんがそう言ってたじゃん」
「なにやら難しい説明をされたが、わしにはサッパリじゃ」
「あたしもよく分かんなかったけど、とりあえず運ぼっか」
「……そうじゃな」
葵の超理論(?)によれば、漬物がサメにクリティカルヒットするらしい。
〈サメは嗅覚が発達した生物です。一滴の血を100万倍に薄めても嗅ぎ分けるそうですが、逆に言えば、強烈な匂いに弱いとも言えます。サメは尿素で浸透圧調整をしているので、塩分過多にして体内のバランスを崩せば、致命的なダメージを与えられる可能性があります。あの飛行も止められるかもしれません。つまり、匂いが強烈で、塩分が豊富で、かつこの家に大量にありそうなもの……『漬物』です。 これをぶつけてサメを弱らせ、動きを鈍らせたところを、所長が弱点の鼻柱をチェーンソーで一閃。これで、あの巨大進化個体といえども撃破可能と判断します〉
……とのことである。ホンマかよ。
台車に漬物樽と漬物用の塩(追い塩用!)を山積みにし、二人で「よいしょ!」「こらしょ!」と運んできた。
「葵さん、持ってきたよ!」
庭ではいまだ死闘が継続中。
巨体で襲い来るグレート・松シャークを鮫島が紙一重でかわし、チェーンソーの剣先を合わせる。が、やっぱり硬くて刃が通らない!
葵は涼しい顔でひょいひょい松ぼっくり爆弾を避け続けている。なんなんだこの人。
「ありがとうございます。では、いよいよ反撃開始ですね」
「こんなんで、あいつを倒せるんか……?」
「漬物はあくまでサメの足止め、デバフ効果です。これを投げつけて弱らせ、空中機動を封じた上で、所長がフィニッシュブローを決める。そういうプランです」
「もし効かなかったら?」
不安げなユキに、葵はキラーンと眼鏡を光らせた。
「大丈夫です。私の分析に、ミスはありません」
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