序章その2 やっぱり強くてニューゲーム?
街って、怖い。どうも、コミュ障陰キャ不登校です。
ついさっきあんなにも意を決して家を飛び出してきたというのに、もう家に逃げ帰りそうです。
今はちょうど八時頃、つまり通勤通学ラッシュに直撃してしまっていたのだ。俺の通っていた(通っている?)のは普通の公立中学校なので、近所の子の大半が通っている。そのため、いじめっ子とばったり会う危険性が脳裏によぎってしまうのだ。
体感では25年以上経っているというのに、頭に刻まれた恐怖、嫌悪感というのはそう簡単には消えないようで、体が勝手に拒否反応を示そうとしてしまう。
しかしこんなところで逃げ帰るわけにはいかない。何とか同年代の人にあわないように気を付けながら歩を進め、近所の公園にたどり着いた。
昔に数回乗ったことのあるブランコに腰かけ、静けさの中で今後のことを考える。
しかし、大した案は浮かんでこない。俺の脳に去来するのは、あのアニメの続きどうなるのかな、25年待ちかな、とか、そういえば未納の案件あったのにな、とかそんな
……そうだ、一周目を参考にすればいいんだ。そうすれば、ただぼうけんの書が消えただけではなく、レベル上げをしていないだけでちょっと強い武器を持った状態での強くてニューゲームにすることができるかもしれない。
無論、そんなにすごいスキルや知識を持っているわけではないので、ちょっと強い武器を持っているだけなのだが。それでもないよりはましだし、使い方によっては輝く場面がくるかもしれない。
ほら、ド〇クエのどくばりがメタル狩りで役立つみたいな。
そう考えると、なんだか活力が湧いてきた。よし、こうなったらこのろくでもない人生をもう少しまともなものに変えてやろうじゃないか。
そうと決まれば、
生きる目的となると少し哲学的にも感じられるが、それで言うと一周目の経験が生きるかもしれない。散々一周目では本を読み漁っていたが、その中に昔の偉い人が書いたような本も多くあった。その知恵をお借りしよう。
俺はもともとただ死へ向かうだけの人間で、没個性の極みみたいな生き方をしていた。その状況を直接的に批判した人が昔にいたらしい。名前は忘れた。
その人曰く、人間は決断によって自分の生き方を自由に決められるという点で、他の生物とは一線を画す存在らしい。俺みたいなカスが語ると陳腐に聞こえるが、偉い人が言うならそうなんだろう。
よし、決めた。俺は何も得られない死へと伸びたレールが敷かれたこの人生に、自分の手で分岐器を作ってやろう。それが今のところの俺の生きる目的だ。
じゃあ次は目標を定めよう。大きな目標はまともな人生を送ること。生きる目的と変わらない。今大事なのはそれではなく、さしあたっての小さな目標だ。千里の道も一歩から。急いては事を仕損じる。昔の日本人も言ってる。
目標といっても具体的なことが浮かびづらいが、今学校に行くことは難しいから、そこからテコ入れをするのは厳しい。そうなると、今までの人生があまり影響しないような部分に介入するのが一番楽だろう。
……高校デビュー。そんな言葉が俺の脳裏によぎった。これだ。これなら今までの人生もそこまで影響しないし、ある程度レベルの高い高校に入学できれば、中学校のいじめっ子たちと関わり合いになることもないだろう。
よし、まず小さな目標は
俺は来た時よりも軽い足取りでブランコから立ち上がった。
P.S.
軽い足取りで家に帰る途中に同級生と出くわすという事件が発生したものの、ゴミを見る目を向けられただけでトラブルなどはなかったからノーダメージで済んだ。
嘘です。心にえげつないダメージを負いました。やっぱり今までの俺の人生ってゴミみたいなものだったんだなと再認識させられました。
やはりこの人生は変えないといけないと心に刻みました。
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