第1話 はじめての川登り

魚町(うおまち)のはずれに、小さな川が流れている。

その川を見あげながら、イワシくんは思った。


(ぼくも、もっと強くなりたいな。)


ある日、川の上流から、力強く泳いでくる魚がいた。

銀色にひかる体、ぐっとしぼったひれ。

――それは、鮭(さけ)さんだった。


「こんにちは!」

イワシくんが元気にあいさつすると、

鮭さんはにっこり笑った。


「おや、小さなお客さんだね。どうしたんだい、こんなところで?」


「ぼくも、川をのぼれるくらい、立派になりたいんだ!」

イワシくんは胸をはった。


すると鮭さんは、川の流れを指さした。

そこには、大きな岩がごつごつと並んでいる。

水はごうごうとうなり、流れはとても速い。


「見えるかい? あの岩をこえて、さらにその先の流れものぼるんだ。」

鮭さんは言った。

「だけど、一回でうまくいく魚なんて、ほとんどいない。何度も失敗して、何度も立ち上がるんだ。」


イワシくんは、ぐっと目をとじた。

(ぼくにできるかな……。)


でも、すぐに目をひらく。


「やってみる!」


イワシくんは、小さな体で、ばしゃん!と水に飛びこんだ。

しかし、流れはつよく、すぐに押しもどされてしまった。


何度も、何度も。

ときには水にのまれ、岩にぶつかりそうになりながら、

イワシくんはあきらめなかった。


見ていた鮭さんが、うなずいた。


「そうだ、それでいい。だいじょうぶ、君ならのぼれる。」


そして、何度目かのジャンプ。

イワシくんは、ぐいっとひれをふるわせ、

とうとう――一番小さな岩をこえた!


「やったー!」

イワシくんは水しぶきをあげながら、声をあげた。


鮭さんが、あたたかく言った。


「小さな一歩でも、それは立派な一歩だよ。

川の流れも、夢の流れも、こつこつのぼっていけばいいんだ。」


イワシくんは、胸いっぱいに川の風をすいこんだ。


(ぼく、きっと、どこまでも行ける気がする!)


魚町に、今日も、ちいさな英雄の物語がふえた。


🎣 ここで覚える漢字:鮭(さけ)

魚町一、川をのぼるのが得意な魚。


がんばる心と、あきらめない強さを教えてくれる。


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