第7話 アリエット村到着と情報収集
DSの正確無比なナビゲーションのおかげで、俺は道に迷うことも、危険なモンスターに遭遇することもなく、無事に森を抜けることができた。視界が開け、眼下に広がる風景に、俺は思わず息をのんだ。
「おお……!」
緩やかな丘の斜面に沿って、パッチワークのように畑が広がっている。黄金色に輝く麦畑、緑豊かな野菜畑、そして点在する果樹園らしきもの。その畑の間を縫うように小川が流れ、そのほとりに、十数軒ほどの木造家屋が肩を寄せ合うように建っていた。煙突からは白い煙が立ち上り、のどかな生活の営みを伝えている。あれが目的地の「アリエット村」だろう。想像していたよりもずっと小さく、素朴な村だ。だが、厳しい自然の中で人々が協力し合い、懸命に生きてきたであろう歴史が感じられる、温かみのある風景だった。
村の入り口には簡素な物見櫓と丸太の柵があったが、門番がいるわけでもなく、自由に出入りできるようだ。俺が村に近づくと、畑仕事をしていた数人の村人が、やはりこちらに気づいて手を止めた。黒髪黒目の異邦人は、この辺境の村では相当珍しい存在なのだろう。好奇心と、少しばかりの警戒心が入り混じった視線が、俺に突き刺さる。
「(うっ……やっぱり見られるな。まあ、仕方ない。怪しまれないようにしないと……)」
内心で気を引き締めつつ、俺はできるだけ穏やかな表情を装って村の中へと足を踏み入れた。その瞬間、DSから通知が入る。
『ユーザー・ユウキ、現在観測範囲内の村人反応、感情分析結果を表示します。敵意レベル:低(3%)。主要感情:好奇心(68%)、軽度の警戒(25%)、無関心(4%)。概ね、友好的とは言えないまでも、敵対的ではありません。通常通り接することで、警戒心は徐々に解ける可能性が高いと予測されます』
「(感情分析、ほんと便利だな……でも、やっぱりちょっと怖い気もする)」
人の心を数値化されるのは複雑な気分だが、危険がないと分かれば安心できる。俺はDSの分析を信じ、村のメインストリート(と言っても、せいぜい幅3メートルほどの土の道だが)を進んだ。道端で遊んでいた子供たちが駆け寄ってきて、物珍しそうに俺の周りをうろちょろしている。家の軒先では、お婆さんたちが井戸端会議(?)に花を咲かせている。すれ違う村人たちは、軽く会釈をしてくれる人もいれば、訝しげな顔で通り過ぎていく人もいた。
「(さて、まずは宿を探さないと……)DS、村の宿泊施設を検索。あと、通貨とか、この辺りの基本的な情報も頼む」
『承知しました。検索結果を表示します。
宿泊施設:村内唯一の宿屋“木漏れ日亭”。村の中心広場に位置。現在の空室状況:空きあり(3部屋)。料金:素泊まり銅貨8枚~、食事付き銅貨12枚~。評判:3.5/5.0(比較的良好)。
通貨:アルカディア王国標準通貨(金貨、銀貨、大銅貨、銅貨)。1金貨 = 10銀貨 = 100大銅貨 = 1000銅貨。
物価(推定):黒パン1個 銅貨1枚、エール1杯 銅貨2枚、簡易な薬草 銅貨3枚~。
その他:冒険者ギルド支部はなし。商業都市フォルトゥナからの担当官が週一回来訪』
ウィンドウに次々と表示される情報を目で追う。宿はある。だが、値段が……銅貨8枚。今の俺の所持金はゼロ。いきなり詰んだか?
『ユーザー・ユウキ、所持金ゼロの状態を認識。代替案を提案します。宿屋“木漏れ日亭”にて、労働力を提供することによる宿泊費割引、または全額免除の交渉。成功確率(推定):65%。推奨される交渉スクリプトおよび労働内容を生成しますか?』
「……ああ、頼む。というか、それしかないよな」
異世界に来て早々、宿代のために労働交渉とは……前途多難にも程がある。だが、やるしかない。俺はDSが表示した交渉スクリプト(パターンB:労働意欲アピールが最も有効らしい)と、推奨労働内容(水汲み、薪割り)を確認し、村の中心にあるという「木漏れ日亭」を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます