第23話 アイテムを選べ
野盗と俺は女神ザインの展開するバリアの中に取り込まれる。
野盗は汚く笑いながら見てくる。
「グハハハ、わかっているだろうな。この中に入ればいかなる暴力も女神ザインがそれを許さねえ!」
「……なぁザイン様よ。そいつは野盗なんだが、それでも法力勝負を引き受ける気か」
『法力の下では皆誰もが平等なのです』
「野盗も俺も同じってことかい」
バリアでもう外界が視認できない。
俺は外にいるキリアに声をかけた。
「おーいキリアちゃん聞こえるか。外にいる2人の身包み剥いで武器をへし折って拘束しておいてくれ」
返事は聞こえてこないが、あのキリアならしっかりやってくれることだろう。キリアなら2人くらい大したことないが、俺が大したことある。この勝負のあとに出待ちされたら困る。
「後処理はヨシ。おい法力勝負するぞ、このやろう」
「いや、発動したのオレなんだけど……」
「どっちでもいいだろ。そんなこと。さあ、法力勝負だ。さっさと賭物を言いやがれ」
「……舐めやがって。おまえらの身包みを賭物にして、剥いで、叩きのめしてやろうと思ったが、やめだ! おまえの命をもらう!」
「……そういうのもアリなの?」
『アリです』
「あっそ。いいぜ」
「グフフ、怖気づ、えっ、い、いいのかよ? おまえ、死ぬんだぞ? いかれてんのか?」
「何言ってやがる。賭物は同等に近いものしか認められない。さすがに俺の命でも安くはないだろう……じゃあ、てめえも賭けるんだよな? 命を」
そう言うと、野盗の男は唖然としていた。
奴は脅しのつもりでふっかけたんだろうが、生憎、そういう勝負は初めてじゃないんだよ。……まあ、この世界でもそんな勝負をするとは思わなかったが。
野盗の男は唾を飲み込み、焦りを隠すように口をゆっくりと開いた。
「…………わ、わかってないな。女神ザインが同等と認めれば同じものじゃなくても、なんでもい、いいんだよ! 金貨10枚だ! 殺し屋の依頼料はそれくらいだと聞いたことがある! 賭物は、それでどうだ!」
ザインは少し黙り、野盗の男にたずねる。
『……本当に、それでよろしいですか?』
野盗の男は瞳を覗かれて一瞬動揺するが、「ああ!」と声を荒げる。
『同等とみなしますが、承諾権はサイキ様にあります。サイキ様、いかがいたしますか? 同様に命を要求することもできます』
たしかに俺だけ命を賭けた勝負をするのは癪だ。
……だが、これから生活していくのなら金が必要だ。金貨10枚もあれば、価値は定かじゃないが、しばらく生活できるだろう。こうなるならキリアに物価のことを聞いておけばよかったな。
「わかった。金貨10枚でいい」
こうして俺は奴の命よりも金貨10枚を選択した。
『サイキ様の賭物はご自身の命。ザッピーノ様の賭物は金貨10枚。これでよろしいでしょうか』
「ああ」
「おうよ」
『交渉終了。勝負に関する交渉もありませんので、勝負内容はこちらでランダムに決めさせていただきます。……決定しました』
すると、以前も見たウィンドウが互いの前に出現する。
『今回の法力勝負ですが、まず先にアイテムを選んでいただきます。選択時間は20秒間です。では、選択開始』
アイテムを選ぶ……そういう物を使った勝負もあるのか。
ウィンドウに表示されている5つのアイテムを見る。
・『新品のフライパン』
・『ピンク色のペンキ』
・『使い古したペンチ』
・『大きなポーチ』
・『読めばたちまち恥ずかしくなるクサいセリフが散りばめられたポエム』
……勝負、何するかまったくわからねえな。
アイテムを見ても今回の勝負がどういうものなのかまったく想像がつかねえぞ。
このアイテムの組み合わせに意味があるのか? いや、何かあるはず……ああ! たしかにある! どのアイテムにも『ぱ行』がある! だからどうした!? ……てか、そもそもなんだ、最後の『読めばたちまち恥ずかしくなるクサいセリフが散りばめられたポエム』ってアイテムは……。気になるけど絶対に勝負で使うことないだろ。気になるけど。命かかってなかったら選んでたかもだけど。
『残り10秒』
あーくそ、落ち着け。
ポエムは抜きにして、残り4つだ。
どれだ? どれが有利になるんだ?
……いや、直感に賭けるか。
これでいく!!
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