第16話 人の王と人魚の女王



「……お見苦しい光景をお見せして申し訳ありません。」


「いや、あなたは私の疑問に答えてくれたのだ、頭をあげてください。あなたがマーメイドであったことを信じます。」


「何を呑気なこと言っているんですか王子!衛兵!早くやつを刺し殺せ!」


 教皇の命令で部屋にいた兵士が一斉に女王に襲いかかった。

「コナー俺たちの出番だ。」


 俺は父さんから教わった剣術と体術で兵士を二人倒した。

「ジョゼフさん大丈夫ですか!?」


 ジョゼフさんの方を見ると俺が二人倒している間に六人の兵士を気絶させていた。

「たかが二人に何をしている!王子、私は衛兵を……」


「何を勝手な命令をしているのですかラビエ教皇。あなたにはこの部屋で大人しくしていていただきます。」


 王子は怒りの表情と剣を教皇に向けた。

「何を言っているのですか!あいつは魔物ですよ!まさかあんなやつの話を本気で聞く気ではありませんよね!」


「貴様こそ何を言っている彼女は言っていたではないか。人からマーメイドになったと、彼女を魔物と呼ぶことは私が許さん。」


「……!!」


 悔しそうな顔で教皇が王子を睨みつけるが王子は無視して話を進めた。

「失礼しましたレティシア様、この罰は如何様にもお受けします。」


「いいのですマルク王子。私は殺される覚悟をもってこの会談に望んだのです。そんなことよりも私のお話を聞いていただけますか?」


「お聞きします。」


 女王は王子に魔物が活発になってきていることや神話の話それから他種族の協力の話をした。

「魔物が活発になってきている話は我々も冒険者の方々から報告をいただいています。けれど水の神が存在していることは初耳です。水の神は今も存在しているのですか?」


「恐らく存在しています。最後に私が水の神を見た時は私の国が海に飲まれた時だったので確証はありませんが、海に魔力が満ちているので生きていると思われます。」


「……わかりました。エリク、父上をここに連れてきてくれ。」


 王子が執事に命令をしてから数分後杖をついたヨボヨボの老人を連れ執事が部屋に戻った。

「父上……お休みのところ申し訳ありません。この方たちが父上にお話があるそうです。……父上?」


 王様は部屋に入り女王の顔を見るとボロボロと泣き崩れた。

「……会いたかった……ずっと会いたかった……。」


「……?まさか……あなた!コナー彼に車椅子を近づけてください。」


 俺は車椅子を押し王様に近づけた。

「レティシア……私を許してくれ……君ともう一度会って気持ちを伝えると約束したのに……結局会うこともできず……嫁も子供も作ってしまった……。」


「やっぱりケヴィンなのね……あなた王様になったのね。だったら仕方ないわよ、子供を作らない訳にはいかないもの。それにこうしてまた会ってくれたじゃない。」


「あぁ……妻や友人を亡くし、私もこんなに老けたというのに君は少しも変わらないんだな。」


 王様の口調が変わり声に力が戻ってきている。

「何を言ってるの。あなたも何も変わってないわ。昔もこうして約束を守ってくれたもの。」


「あぁ……周りが皆死んで、長寿なんて虚しいだけのものだと思っていたが、君に会えて本当によかった……なぁレティシア最後に一つ酷いお願いをしてもいいかな?」


「なに?」


「私の人生をここで終わらせてほしいんだ。実はこうして喋るのももう辛いんだ……できれば最後はあの時のように君の顔を見て目を瞑りたいんだ。」


「…………わかったわ。」


「ありがとう……」


「何を言っているのですか国王様!あなたはこの国のシンボル!あなたが亡くなってしまうとこの国はどうなってしまうのですか!」


「国のことはマルクに任せる……マルクお前は子供たちの中でも一番賢い、あとは頼むぞ……。」


「父上……。」


「ダメだ!ダメだ!国王が死ねば私の立場はどうなる!王から離れろクソマーメイド!」


「てめぇは王様の最後の願いも邪魔するつもりか!」


 教皇は隠し持っていたナイフで女王を刺そうとしたが、ナイフが女王に届く前にジョゼフさんの拳が教皇の顔面を捉えた。

「俺たちが守っててやるから、俺たちの王様の最後の願い叶えてやってくれ!」


 俺とクロそれからジョゼフさんは衛兵たちから王様を庇うように立ち塞がった。

「マルク……よい友人を持ったな……」


「……はい!父上!」


「最後になにか言い残すことはある?」


「私は君をずっと愛していた。会いに行くことができなくてごめんなさ。」


「……もっと早くそれが聞けたらよかったのに……」


 女王様が王様にキスをすると王様は静かに息を引き取った。

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