8唯一の選択

そして僕らは、ほとんど言葉を交わさないまま王国に辿り着いた。

沈黙を引きずったまま、いつものように王都の門をくぐろうとした、その時だった。


「待て」


低く鋭い声が僕らを制した。

次の瞬間、護衛たちが槍を構え、まっすぐ僕たちに向けてくる。


……おい、嘘だろ?


あまりのことに言葉が出なかった。

「今すぐ王国から離れろ」

護衛の一人が冷たく告げた。


その奥に、女王の側近──あの秘書がいた。

彼は何かを言いたげにこちらを見ていた。だが、目に宿るのは怒りか、困惑か、それとも……全く別の感情か。


視線の意味は、読み取れなかった。

ただ、確かなのは――そこにあったのは「言葉」ではなく、「沈黙」のまなざしだった。


でも、僕たちはそれ以上どうすることもできなかった。

何も聞けず、何も言えず、ただその場を離れるしかなかった。


目的地を変えるしかない。

それが、今の僕たちにできる唯一の選択だった。

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