5いつもの村の様子

討伐を終えて村に戻ると、すぐに異変に気づいた。

ざわついた空気、落ち着かない人々の様子――何かが起きている。


村の中央に駆けつけると、そこにいたのは怯えた顔の子ども。

ナルディアの、弟だった。


「っ…弟が何かしたんですか!?」

彼女は叫びながら弟に駆け寄る。戦士もそれに続いた。


村人たちは口を濁したが、やがて一人が言った。


「……ポータルが、壊されてた」

「そして、それを壊したのは――彼だって話が出てる」


理解できなかった。

リスポーンのポータルが壊された……?


「何言ってんの!? こんな小さな子がそんなことできるはずない!」

ナルディアは激しく否定する。


僕も言葉を続けた。

「教会はモンスターの縄張りを越えた先にあるだろ!?子どもがそんな場所、無事に行けるわけがない!!」


すると、村人の一人がぽつりと呟いた。


「でも、もし途中でモンスターにやられてたら……リスポーンで教会に出るじゃないか?」


その瞬間、僕たちは言葉を失った。


――たしかに、倒されれば、リスポーンで教会に出る。

つまり、教会に"行けない"わけじゃない……。


だが、それでも何かがおかしい。

そんな偶然が、都合よく起きるか? 本当に、この子が――?


ガーフは黙り込み、盗賊は周囲を見渡していた。まるで、何かを探すように。

誰にも気づかれないように、小さく眉をひそめる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る