3守るもの
「今日も行くか。」
俺は支度を始めながら、歯を磨きつつカレンダーに目をやった。今日の日付には「女王様」と書かれている。
「あ、今日は女王様にお会いしなきゃな。」
ガーフがふと顔を上げて言った。「俺ら、どこに向かってるんだ?」
「今日は女王様のところだよ。」俺が答えると、ガーフはしばらく考え込んでから、呆れたように言った。
「え、今日女王様に会いに行くのか?完全に忘れてたわ…」
「マジで?こんな重要な日を忘れるなんて、あんたどうかしてるわよ!女王様に会えば、やっと1ヶ月分の給料がもらえるってのに。」
「は?お前こそ言えた義理じゃないだろ!この前、こいつが…」
喧嘩が始まりかけたその時、戦士が静かに口を開いた。「ナルディア、弟さんのこと、生活が大変なんだろ?」
「あ、うん…そうなのよ。弟がいるから、どうしてもお金が足りなくて。」ナルディアは少し沈んだ表情で答える。
「助けが必要なら、いつでも言えよ。」ガーフがポンと肩を叩いた。
「え、あんたが言うの?珍しいわね、でもありがと。」ナルディアが少し笑った。
この一瞬の優しさが、ほんのり心に響く。いつもならすぐに喧嘩が始まるのに、こんな風にお互い気遣い合うのが少し新鮮だ。
そんなこんなで、女王様のいる王国へ到着した。
王国の門をくぐると、すぐに市民たちの歓声が響いた。
「勇者様、ようこそ!」「勇者様だ!」 「いつもありがとうございます、勇者様!」
ここは村とは違い、圧倒的に人が多い。賑やかで活気に満ちている。
「へへへ、やっぱりここに来ると気分がいいね。歓迎されるって最高。」盗賊が満足そうに言った。
俺たちはそのまま、女王様の城へ向かう。
城に着くと、門番が声をかけてきた。「彼らを入れなさい。」
女王様の命令でドアが開かれ、俺たちは中に通された。女王様が笑顔で迎えてくれる。
「勇者方殿、ようこそ。」
俺たちは跪いて挨拶した。
「こちらこそお呼びいただき、光栄です。」
周りを見渡すと、いつ来てもこの城には感動させられる。カーペットがまるで宝石のように輝いている。
「あなた方の活躍、私たちはしっかりと見ておりました。」女王様が語り始めると、話が長くなる気配を感じた。
「魔王が死んだ後、しばらくモンスターの姿が見当たらなかった。しかし、最近になって突然現れた者たちが、我々の平和を脅かし始めています。あなた方が立ち上がり、この世界を守ってくれていることに、心から感謝しています。」
…一時間くらい話してたんじゃないか?正直言って、ちょっと長すぎだろ。俺は心の中でため息をつきながらも、耳を傾ける。
「それでは、勇者殿。あなた方の今後の活躍を、心から願っております。」そう言うと、ようやく話は終わった。
俺たちは無事に給料を受け取って、城を後にした。
帰り道、市民たちの歓声がまた耳に響いた。
「なあ、結構褒められたな。正直、俺たちあんまり大したことしてないと思うんだけど。」ガーフが言った。
「でも、疲れるけどやっぱりやってることはあると思うよ。」ナルディアが反応する。
「俺たち、もっと強くならなきゃな。」戦士が真面目な顔をして言った。
「でも、何のために?モンスター、そこまで強くなくない?」盗賊が冷静に問いかける。
「…確かに、そう言われればな。」俺も考え込む。
「そもそもモンスターがいること自体おかしくない?私、思うんだけど…普通、支配人がいなくなったら、モンスターも消えるものじゃない?魔王が死んだ後、しばらくモンスターが現れなかった気がするし」盗賊が口にしたその言葉には、ちょっとした疑問が隠れていた。
そのまま話を続けながら、俺たちは無事に村へと戻った。
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