第29話
リーフガーディアンの巨腕が振り下ろされる寸前、俺は水流支配で海流を操った。
瞬間、足場が崩れたかのように敵の体勢が狂う。
そこを逃さず、俺は牙を剥き出しにして跳びかかった。
狙うは、肩から首にかけての隙間。
どんなに防御が高かろうと、関節の繋ぎ目には必ず弱点がある。
牙を突き立てた瞬間、鈍く重たい手応えがあった。
分厚い皮膚と筋肉を裂き、骨に達する感覚。
リーフガーディアンが苦悶の咆哮を上げる。
海面が震え、空気がビリビリと震えた。
だが、俺は離れない。
捕食本能と血潮の加護を発動し、一撃ごとに回復し、さらに攻撃力を高める。
ガーディアンのもう一方の腕が振り払われる。
だが、感知スキルで動きを完全に読んでいた俺は、瞬時に離脱した。
高速遊泳で大きく回り込み、今度は背後から牙を突き立てる。
ズブリと肉が裂ける音。
同時にリーフガーディアンの動きが鈍くなる。
(効いてる……!)
巨体に見合わないスピードとパワーに油断できないが、弱点を突き続ければ必ず勝てる。
俺は血の匂いを追い、さらに追撃を加えた。
水圧噴射で目を眩ませ、渦潮掌握で体勢を崩す。
完全にペースを掴んだ。
ガーディアンが反撃の隙を見せた瞬間、俺は最大出力の牙を首元に叩き込んだ。
ぶちぶちと肉が裂ける嫌な音と共に、大量の血が噴き出す。
血潮の加護が発動し、俺の動きはさらに速くなる。
リーフガーディアンが巨体を揺らし、最後の力で反撃してきた。
大地を割るかのような一撃だったが、俺はそれすら読み切り、最小限の動きでかわした。
反撃の後、隙だらけになったガーディアンの喉元に、俺は全力で牙を突き立てた。
ズバァッと大きな音を立てて、ガーディアンの動きが止まった。
感知スキルが告げる。
──敵意、消失。
(……勝った)
荒い呼吸を整えながら、俺は勝利を噛み締めた。
【経験値を獲得しました】
【レベルが21に上昇しました】
【新スキル:海神の加護(初級)を習得しました】
海神の加護。
名前だけで、ただならぬ力を感じさせるスキルだ。
俺はすぐに詳細を確認した。
【海神の加護(初級):水中および海上における全ステータスを常時一割上昇させる】
(……強い)
今まで以上に海と一体化する力を得た。
これなら、地上に乗り込んでも圧倒的な力を保てる。
俺はガーディアンの肉に食らいついた。
重厚な肉質だったが、かみ砕くたびに確かな成長を実感できる。
【経験値を獲得しました】
【筋力が上昇しました】
【耐久が上昇しました】
ステータスも確認する。
【レベル:21】
【HP:102/102】
【MP:16/16】
【筋力:54】
【敏捷:64】
【知力:13】
【耐久:38】
すべての数値が着実に伸びている。
進化して、さらに狩って、俺は確実に頂点へと近づいている。
地上の匂いを嗅ぎながら、俺は再び島へと目を向けた。
陸には、まだ見ぬ強者たちが待っている。
新たな獲物。
新たな力。
そして、新たな進化。
すべてを手に入れるため、俺は水面を蹴り、島へと向かって進み始めた。
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