第21話
サンドデビルシャークの残骸を見下ろしながら、俺は拳を握りしめた。
手応えは確かにあった。
だが、満足なんてしていない。
この程度で満足していたら、海の王になるなんて夢物語だ。
ここで立ち止まるつもりはない。
さらに強く、さらに上へ──それが俺の絶対の目標だ。
感知スキルを広げ、周囲を探る。
さっきの戦闘音で、周囲のモンスターたちは一斉に散っていた。
だが、遠くの方に、微かにだが強い気配を感じた。
(あっちか……)
迷わず進む。
休む時間なんていらない。
身体はまだ動く。
心も折れていない。
むしろ、勝てば勝つほど、飢えは増していく。
この力を、もっと試したい。
もっと極限まで高めたい。
俺は砂地を蹴り、深海へと続く暗い穴へ潜り込んだ。
途端に、辺りはほとんど光の届かない闇に包まれた。
だが、俺には微光の祝福がある。
暗闇の中でも、ぼんやりと周囲を見渡せる。
深く、深く潜る。
水圧はどんどん強くなるが、進化した今の俺には大した負担じゃない。
やがて、巨大な地下空間に出た。
そこには、異様な存在が待ち構えていた。
【デスリーフイール】
【レベル:18】
【特徴:電撃攻撃、捕縛能力】
(……強いな)
今まで戦ったどのモンスターよりも、圧倒的な気配を放っている。
レベル差は五。
普通に考えれば、勝ち目なんてない。
でも、俺は笑った。
(だからこそ、やる価値がある)
これを超えなきゃ、次はない。
俺は一気に加速し、イールに向かって突進した。
イールは素早く反応し、身体をうねらせながら電撃を纏った。
バチバチと音を立てる稲妻。
当たればひとたまりもないだろう。
だが、避けられない速度じゃない。
俺は感知スキルを最大限に働かせ、わずかな予備動作を読み取った。
次にどちらに動くか、どこに電撃を放つか──すべて、手に取るようにわかる。
そして、刹那。
イールが尾を振り上げ、電撃を放った。
俺はそれを寸前で回避し、逆に渦潮操作を発動。
イールの動きを鈍らせ、強引に間合いを詰めた。
牙を剥き、首元へ突き刺す。
だが、イールの鱗は異常なほど滑らかだった。
牙が滑り、思うように食い込まない。
(やるじゃねえか──!)
興奮がさらに高まる。
ならば、力技だ。
捕食本能と血潮の加護を発動させる。
少しでも傷を付ければ、そこから一気に優位を取れる。
俺は牙を引き抜き、イールの身体にまとわりつくように絡みついた。
硬鱗化で身を守りながら、爪と牙で徹底的に引き裂く。
ズバズバと肉を裂く音が響く。
イールが電撃を纏い、暴れ狂う。
だが、捕食本能が俺の体力を維持させ、血潮の加護がさらに攻撃速度を高める。
(速い──今の俺、速すぎる!)
イールの反撃をすべて紙一重でかわしながら、ひたすら急所を削った。
徐々に、イールの動きが鈍くなっていく。
攻撃が荒くなり、力任せになっていく。
勝機は近い。
俺は渦潮操作で再び水流を乱し、イールを完全に攪乱した。
そして、最後の一撃。
牙を深く突き立て、思いきり引き裂いた。
ぶしゅう、と大量の血が水中に広がる。
イールの巨体が、動かなくなった。
感知スキルが告げる。
──敵意、消失。
(勝った……また、勝った!)
俺は牙を食いしばり、震える拳を握った。
限界を超えた実感があった。
【経験値を超大量に獲得しました】
【レベルが15に上昇しました】
【新スキル:雷撃耐性(初級)を習得しました】
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