第19話
シーモアリザードの肉は、硬く、噛み応えがあった。
だが、そんなことはどうでもよかった。
食えば食うほど、身体の奥底から力が溢れてくるのを感じる。
筋肉が膨れ、骨が強くなり、鱗がさらに硬質化していく。
俺は無心で食い続けた。
満腹感なんて存在しない。
ここで手に入る力は、すべて俺の糧にする。
【経験値を獲得しました】
【筋力が小幅に上昇しました】
【耐久が小幅に上昇しました】
ウィンドウが立て続けに開き、成長を実感させる。
(いい……このペースなら、もっと上へ行ける)
俺はゆっくりと立ち上がり、深く息を吐いた。
海水が体中を流れ、熱を冷ましていく。
進化してから、戦い方が大きく変わった。
サハギンだったころは、必死に逃げながら小さな獲物を狩るしかなかった。
今は違う。
正面からぶつかり、勝つ。
敵を圧倒し、力でねじ伏せる。
(まだまだ強くなれる……)
感知スキルを広げ、次なる獲物を探す。
この岩礁地帯には、まだ未探索のエリアが多い。
きっと、未知の強敵が潜んでいるはずだ。
慎重に進みながら、俺はさらに深い場所へ向かっていった。
海底の景色が変わる。
岩礁地帯を抜け、広大な砂地が広がっていた。
そこに、奇妙な光景を見つけた。
巨大な骨。
何かの生き物の骸骨が、砂に半ば埋もれるようにして転がっている。
(……何だ、あれは)
近づこうとした瞬間、感知スキルが警告を発した。
強烈な敵意。
今まで感じたどんなモンスターよりも濃厚な殺意。
(いる──!)
すぐに身を隠す。
砂に潜むようにして待ち構えていたのは、異形の存在だった。
【サンドデビルシャーク】
【レベル:15】
【特徴:高速度、高攻撃力、奇襲型】
(レベル15──やばい)
本能が警鐘を鳴らす。
今の俺でも、正面からぶつかれば五分五分、いや、それ以下かもしれない。
だが、ここまで来て、引き下がる気なんてさらさらなかった。
(やる──ここで、さらに上へ行く)
タイドリーパーに進化した俺なら、勝てる可能性はある。
冷静に作戦を練る。
サンドデビルシャークは奇襲型。
一撃離脱を得意とする高速モンスターだ。
ならば、逆に、こちらから速度で圧倒する。
高速遊泳と渦潮操作。
これらを組み合わせれば、奴の動きを封じることができるはずだ。
俺は岩陰からじりじりとにじり寄った。
ターゲットの気配を、感知スキルで正確に捉えながら。
砂を蹴り、猛スピードで飛び出す。
敵もすぐに反応した。
砂を巻き上げ、鋭い牙を剥きながら突進してくる。
だが、読み切っていた。
水圧噴射を横に放ち、水流を乱す。
サンドデビルシャークの進路がわずかにぶれる。
その隙を突いて、渦潮操作を発動。
小規模ながら、周囲に激しい水流を作り出した。
動きを封じられたシャークが、一瞬だけ動きを止める。
(今だ──!)
俺は高速遊泳を最大限に活かし、真正面から突撃した。
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