8話 最後の一撃
砂塵の向こう、ノワヴィスはなおも蠢いていた。
肉の腕を広げ、空間を震わせながら、再び迫ってくる。
セリオスは、剣を握る手に力を込めた。
(あと少しだ、耐えろ。)
ミレアが盾を前に出し、氷の結界を重ねる。
シュリオが、雷の癒しを流し続ける。
だが、ノワヴィスの動きも確実に鈍り始めていた。
――ヤツのからだも、限界が近い。
セリオスは、確信した。
「全員、一点集中だ!」
短く、しかし確かに声を響かせた。
ライゼもミレアも、セリオスの背に続く。
シュリオは癒しを纏わせ、小隊全体を支える。
ノワヴィスが、腕を振り上げる。
セリオスは、剣を構え、真正面から駆けた。
砂が飛び、空間がわずかに歪む。
肉の鎧の裂け目が、瞬間、視界に映る。
(今だ――!)
セリオスは、全身の力で剣を振り抜いた。
ライゼとミレアも、ほぼ同時に斬り込む。
ノワヴィスの肉体が、大きく揺れ、そして音もなく崩れ落ちた。
セリオスは、剣を引き抜き、深く息を吐いた。
荒野に、静けさが戻る。
無音の世界に、微かな風だけが吹き抜けていた。
「……終わったな。」
ミレアが低く呟く。
セリオスは、無言で頷いた。
だが、油断はしない。
崩壊域の浄化が完了するまで、まだ任務は終わっていない。
セリオスは、剣の柄に手を添えたまま、荒野を見渡した。
空間の歪みが、わずかに静まっていくのを、確かに感じた。
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