6話 最初の衝突

ノワヴィスは、ただそこに立っているだけだった。


だが、その存在だけで、空間が圧迫される。


小隊全員が、わずかに呼吸を整え、剣を構える。


次の瞬間――


空間が弾けた。


ノワヴィスが、一気に間合いを詰めてきた。


セリオスは、反射的に一歩踏み込み、剣を振るう。


刹那、鈍い手応え。


だが、完全には通らない。


「硬い……!」


短く叫ぶミレアの声。


ノワヴィスの肉の鎧が、尋常ではない硬度を持っている。


ライゼが風をまとい、横から鋭く斬り込む。


だが、それでもノワヴィスは微動だにしなかった。


逆に、無数の触手のような異形の腕を伸ばし、小隊を包み込むように押し寄せる。


「広がるな!まとまって防御!」


セリオスの声に、全員が即座に反応した。


ミレアが前に出て、盾を構える。


冷たい氷の結界が、即席の防御陣を形作る。


「シュリオ、支援を!」


「任せて!」


シュリオが雷の癒しを放ち、即座に小隊の耐久力を底上げする。


ノワヴィスの腕が、氷壁を叩き、空間を震わせた。


砕けた氷片が、乾いた砂とともに舞い上がる。


(強い。だが、まだ押し切られてはいない。)


セリオスは冷静に状況を見極めた。


正面からぶつかっても勝てない。


ノワヴィスの硬さは、想定以上だった。


だが――


あれほど硬い肉体が、常に完璧に動けるわけがない。


(必ず、綻びがある。)


セリオスは、呼吸を整えながら、ノワヴィスの動きに集中した。


すべてを見極める。


この一撃で、流れを掴むために――

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