境界線の灯火

ギズモ

プロローグ

乾いた風が、荒野をなでる。


空には雲ひとつない。地には草一本ない。

音も、影も、匂いさえも消え失せた世界。


ここは、崩壊域――かつて、神が夢を見ていた場所。


いまはもう、

何も祝福せず、何も救わない。


ただ、静かに、死が降り積もるだけだ。


セリオスは、足を止めた。


崩壊域の際――境界線は、眼に見えない。

だが、彼のような者には、はっきりとわかる。


空気が、重い。

世界の肌触りが、異様に変わっている。


背に負った剣が、重く、確かな存在感を放った。

セリオスは、それを黙って受け止める。


尊敬を集めようと、孤独は癒えない。


呼吸を一つ、整える。

ただ、それだけでいい。


音もなく、足を踏み出す。


この先に何が待っていようと、

セリオスの歩みは止まらない。

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